思考停止ワードに気をつけよ
一票の格差を論じる前に

 ここまで論じてきたような理不尽を隠し、総論として納得させてしまう不思議な思考停止ワードが、「一票の格差」という言葉だ。

「一票の格差」とは、要は1人あたりの議員に対する有権者総数が同じ程度でなければ不平等だ、という意見であり、一見ごもっともな格調高い意見のように聞こえる。

 しかし、ちょっと立ち止まって冷静になってほしい。単純な数字に翻弄される前に、「一票の格差」とは本質的に何を意味するのか、考えることが必要だ。

 元も子もないことを言ってしまえば、「投票の意味」や「一票の価値」を真面目に論じているインテリの方々には申し訳ないが、「その意味や価値をなくしている原因は、そんな机上の数字ではありませんよ」とハッキリお伝えしなくてはならない。

 そもそも、国政選挙でさえ、もはや半数の有権者が選挙に行かないような状況で「一票の重みが違う」などと言われても、白々しく聞こえてしまうのは筆者だけだろうか。さらに参院選に関して言えば、これまで述べたように、そもそも参議院そのものに意味がないのだから、一票にもなおさら意味も価値もない。

「一票の格差を是正する」ための方法を簡単に説明すると、「人口の少ない地方の議員を減らし、人口の集まっている都市の議員を増やせ」ということになる。しかし、それではほんの微調整にすぎず、当選する議員の顔ぶれを変えるほどのインパクトは全くない。だとすれば、一票の格差を是正した結果、選ばれる議員の顔ぶれにはなんら変わりはなく、なぜそれが有権者の意見をよりよく反映させることになるのか、いまいちピンと来ない。

 自民党は、地方の声を代弁することが必要、と説明するが、「声を代弁する」とは一体何なのか。参議院不要論さえある中で、本当に議員数を増やしてほしいという声が国民の中にあるのか。

 根本的な参議院の意義や選挙制度の欠陥を看過しながら、一票の格差という学者論議ばかりを振りかざし、改革しているふりをし続けるのは、有権者をバカにしているとしか言いようがない。