「高校野球の熱中症対策」というトピックひとつをとっても、主管する日本高等学校野球連盟(高野連)が主体的に施策を打ち出すのはもちろん、その施策に至ったプロセス、結論に至る過程で交わされた議論までもをつまびらかにすることで、“オンブズマン”であるファンの側にも合意形成の素地ができてくる。

「高野連ではもちろん、現状でもいろいろな角度から意見が出ていて、検討、議論がされているのだと思うのですが、その中身がわからないと、共感にはつながっていきません。日大アメフト部やレスリング、ボクシングなど、アマチュアスポーツの不祥事が続いていますが、内向きな、閉じた組織よりも開かれた組織の方が、いまの時代に共感を得やすいのは間違いありません」

 熱中症対策、球児の安全、選手ファーストの視点でどんなことができるのか?池田氏は、オープンな議論でさまざまな意見を検討しつつ、共感を基準に守るべきものは守っていくべきだと主張する。

「例えば、『暑くて試合時間が長くなると危ないから、どんな試合展開でも一律に2時間までにしましょう』というような、野球のルールを出発点にしてしまうような対策は共感を得づらく、受け入れられにくいのではないかと思います。京セラドームでの開催も、歴史や伝統を考えると、やはり共感は得にくいと感じます。

 私としては、例えば、『甲子園球場に開閉式の屋根をつける』というところから議論をスタートさせるのも、一つの案だと思います。もちろんこの意見にもさまざまな批判はあると思いますが、暑さに対する対策が必要不可欠ななかで、日差しの強弱で開閉できる方法なら“甲子園らしさ”も残せるでしょうし、オープンで健全な議論に繋がっていくのではないかと思います。

 守るべきものとして大切にしていくべきものは何か?ファンや民意とコミュニケーションを取りながら、オープンで健全な議論を重ねるなかで“共感”を醸成し、より良い“答え”にたどり着くのが理想的です。誰もが予期できなかった異常気象に対しても真摯に向き合い、本質的な対応策を講じる姿勢でコミュニケーションをスタートできるかが大事になるのではないでしょうか」

 急激な環境の変化や時代の変化、社会通年の変化への適応が求められるスポーツ界にあって、高校野球は、夏の甲子園はどうあるべきか? 熱中症対策をめぐる議論は、同時にスポーツの歴史や伝統を守りつつ、同時代に適応しさらなる発展を遂げていくのかという大きな命題につながっている。

池田 純
早大卒業後、住友商事、博報堂勤務などを経て2007年に株式会社ディー・エヌ・エーに参画。2011年横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任。2016年まで5年間社長をつとめ、コミュニティボール化構想、横浜スタジアムのTOBの成立をはじめ様々な改革を主導し、球団は5年間で 単体での売上が52億円から110億円へ倍増し黒字化を実現した。現在はスポーツ庁参与のほか明治大学学長特任補佐、さいたま市スポーツアドバイザーなどを務める。また、現在有限会社プラスJでは、世界各国130以上の スタジアム・アリーナを視察してきた経験をもとに「スタジアム・アリーナミシュラン」として、独自の視点で評価・解説を行っている。plus-j.jp/ 著書に『常識の超え方』『最強のスポーツビジネス』(編著)など。

(本記事はVICTORYの提供記事です)