トランプ流「力を背景とする取引」に中国が応じざるを得ない局面になるのか。それとも習近平主席が「弱さを見せてはならない」と突っ張ることになるのか。貿易戦争の拡大は経済合理性とは無縁だ。

 お互いの経済の相互依存が高まっている中で、自国製品の中に他国のコンテンツも多く、高関税の賦課が自らの経済に跳ね返ってくる結果になることも容易に想像できる。

 経済の脆弱性から見れば米国に比べ中国経済は圧倒的に脆弱だが、他方、政治的には世論やメディア、ひいては利益団体からの制約を受けにくい点では、中国のほうが耐久力はあるのだろう。

 7月18日付の本コラム「米中貿易戦争の落とし所は『北朝鮮非核化に中国協力』か」で論じたような取引のシナリオはあり得るとしても、貿易戦争が長引いていけば中国の経済成長の低下が世界経済の足を引っ張るというリスクも大きい。

 対イラン問題でも、米国はイラン核合意から離脱し、8月7日にはイラン自動車業界などに対する制裁を再開し、イランの石油業界とビジネスをしている企業への制裁も11月に再開すると表明している。

 核合意の維持を鮮明にしているEUとの間でも最大の摩擦要因となっている。EUはEU域内企業に対し、米国の制裁措置に従うことを禁じる「ブロッキング規則」を援用するとしているが、やはり最大の市場である米国から締め出されるリスクは欧州の企業には取れまい。

 石油についても日欧などの企業は取引を控えざるを得ないだろう。結局、中国などがイランからの購入を増やしていく可能性がある。

 イランではインフレなど経済情勢の悪化に起因する国内の不満は高まっている。トランプ大統領はイランとの交渉の可能性を否定してはいないが、果たしてその意図はより良き核合意を目指すということなのか。

 米国の識者の多くは、トランプ大統領の真の狙いは、宗教に支配された体制を崩壊させるということではないかと論じる。そうでないとなかなか説明が難しい状況だ。

 そうだとしたら、イランでは強硬派が台頭する可能性が高まり、核合意から自らも離脱することになれば中東の大きな不安定要因となる。

 イランはロシアや中国と緊密な関係を追求するだろうし、イスラエルやサウジアラビアとの緊張は一層、強まる。イランが強硬姿勢に転じて、ホルムズ海峡の封鎖に至る事態も完全に否定するわけにもいくまい。