これは、中東におけるサウジアラビア、イラン、イスラエルの関係にも当てはまるだろう。欧州は、経済に関してはEUという話し合いの枠組みがあるが、安全保障についてはNATOがありながら、実際は英国もフランスもドイツも、米国の方を向いて頼りにしている。

 米国は「世界の警察官」をやめたとはいえ、軍事力においてはいまだに圧倒的な世界最強の座に君臨している。世界中の同盟国に軍隊を駐留させ続けているし、「世界の暴力団」として、気にいらない国があれば介入する意欲も満々だ。

 一方、経済については、これまでのような米国市場への自由なアクセスは許さないという。「米国のモノを買え」とトランプ大統領は明確に言っている。それならば、まずは経済で、米国に輸出することばかりではなく、米国抜きで、お互いに仲良く儲けることを考えてはどうだろうか。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されます。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 そして、儲けたお金を、米国に投資してあげればいい。米国内に工場を建てるのもよし。「シェールガス」「シェールオイル」に投資するのもいいだろう。米国は今後、「米国に守ってもらい、食べさせてもらう同盟国」は必要としない。しかし、米国は、「米国を食べさせてくれる同盟国」は必要とする(第150回)。米国を儲けさせ続ける国に対しては、米軍は「用心棒」を務めてくれるだろう。

 日本は、TPP11、RCEP、EUとの経済連携貿易協定(EPA)など、様々な自由貿易体制の枠組みを使うべきである。また中国が主導する「一帯一路」への積極的な参加(第120回)や、TPP11への英国の参加なども仕掛けていくべきである。TPP11のうち、6ヵ国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が英連邦加盟国だ。英国のTPP11参加は、日本と英連邦という「巨大経済圏」を結び付けることを意味する(第134回)。

 日本は、さまざまな国々が「米国抜き」で互いに儲けて、米国を「食べさせる」仕組みづくりを主導すべきである。

<参考文献>ピーター・ゼイハン(2016)『地政学で読む世界覇権2030』(東洋経済新報社)

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)