複数主治医制、タスクシフトなど
「解」自体はあるが進まない虚しさ

 ではどうすればよいのか。もちろん一朝一夕に解決できることではない。

 医師不足と言われるが、年間4000人の医師が誕生しており、実際には医師は偏在している。そして日本は8400と世界一を誇るほど病院数が多いために、各病院が総合病院として複数の専門の科を持つと、医師を1~2名ずつしか確保できない病院も多くなる。そのため、病院では慢性的な医師不足が生じている。

 そこで、病院の数を絞って急性疾患や救命救急に専門的で高度な治療をほどこす「急性期病院」の機能を集約化する、主治医を複数制にして交代で担当できるようにする、医師がしている事務作業を別の医療従事者ができるように「タスクシフト」する、気管チューブ交換など医師が行う医療行為の一部を特定看護師などができるようにする、業務量・対応数に応じて公平に給与を支払うなど、「理想論としての解はあります」と岡部さん。

 しかし、現実問題としてそれらが急に進むことはありえない、という無力感が、「女性の医学部入学者を制限する差別もしかたがない」と65%の医師が思う結果を招いていると岡部さんは言う。

「患者ファースト」「コンビニ受診」など
患者の側の過剰な期待も問題

「応召義務」のプレッシャーがある、あるいは、もともと正義感や使命感が強く、全身全霊で患者に尽くしたい、尽くさなければならないという価値観で働いている医師が多いのは事実だ。

 目の前の患者を救いたいという思いや、実際に多くの命を救って感謝されることのやりがいが、医師を長時間労働に追い込んでいることもあるだろう。その職業意識を否定することはできない。いっぽうで患者になる可能性のあるわれわれも、医師は患者ファーストであるべきと当然のように思い、無意識のうちに、医師に滅私奉公を強いている。

 また、夜間でも休日でも、自分が病気になったら救急病院に駆け込めるのを当然の権利だと思ったり、医療費が安く、誰もが自由に好きな病院にかかることができるため、ちょっとした風邪でも大学病院にかかったりという、「コンビニ受診」が多いのも事実だ。

 女性差別はあってはならない。ただし、それが一部の大学の経営幹部の時代錯誤な価値観だけに起因するものだと考え、今の時代にありえないと断罪して安心するだけでは、差別の根本原因の解決にはならない。むしろ、制度の歪み、大学病院の勤務医の過酷な労働状況、医師・患者双方の意識改革が進まない現状、男性医師と女性医師の間、あるいは子どものいる医師といない医師との間などさまざまなレベルでの分断など、多くの問題を隠蔽することになる。医師の働き方の実態はもっと知られていいだろう。