今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

客観的に分析をする
「アセスメント」を実施

 第2回で「解約防止部」が立ち上がり、私が初代部長になったということをお伝えしました。繰り返しになりますが、その頃は、56万人が加入しても、55万5000人が辞めてしまい、5000人しか残らないという状況でした。

 解約防止部では、まず実態を客観的に分析するためのデータの評価、つまり、「アセスメント」を開始しました。

 部員が社内の顧客データを整理することから始め、顧客数が減少し始めた時期を基準に前後5年間の、加入数と解約数、特に入会後何ヵ月目、何年目に解約しているかを調査しました。

 さらに、その傾向を他社事例と突き合わせて分析しました。他社事例のデータは自社内にはないので、リテンションマーケティングの調査やコンサルティングの実績を持つ外部の調査会社に協力してもらいました。

 複数回にわたって調査を深めていった結果、最終的に調査会社からは次のような報告を受けました。
「ここ数年の顧客動向の最大の変化は、短期で解約する人の増加である。視聴料無料期間が終わった後の解約が多い」
「一方で、長期加入者の解約も徐々に増加している。開局から数年の間に加入した、WOWOWに愛着があると推測される人々の中に解約を思い立つ人が出てきている」

 これらの傾向は、じつは社内でも解約を受けるカスタマーセンターや営業の現場では薄々感じていたことでした。解約の申込みを日々受け付けている現場は、雰囲気的には実態を捉えています。

 しかし、全体の状況や傾向の変化を雰囲気ではなく事実として正しく認識するためには、マーケティングの手法での分析が必要です。

 改めて解約率の変化をポイントに再整理してみると、その数年前から、短期間の視聴で解約する人が増えていることが改めて実感されました。アセスメントを実施したことによって、事実がより具体的に、目の前に突きつけられたわけです。