企業年金を受け取れなくなった
3人の老人が銀行強盗

 原題の『Going in Style』に比べると、遊びまくっている邦語タイトルの通り、映画もコメディーです。ウィリー・デイビス (モーガン・フリーマン)、ジョー・ハーディング(マイケル・ケイン)、アルバート・ガードナー (アラン・アーキン)の3人は同じ工場に勤めていた労働者。現在は同じ老人ホームに住み、余生を過ごしています。

『ジーサンズ はじめての強盗』『ジーサンズ はじめての強盗』

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ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 しかし、3人は以前に勤めていた工場から通知を受け取ります。そこで工場に出向くと、会社側は工場を海外に移転させること、そして新体制移行まで年金の支給を止めることを明かします。

 もちろん、3人は激怒。特に住宅ローンの滞納で銀行から家の差し押さえを求められていたジョーはウィリーに対し、銀行強盗を持ち掛けます。ジョーは直前、銀行強盗の現場に出くわしており、依然として犯人が捕まっていないことが頭の片隅にあったのです。

 この提案にウィリーは賛同しますが、アルバートは「刑務所で死ぬのが嫌」と拒否。しかし、年金基金の資産が会社の再編・清算に使われ、銀行にすっぽり入ることを知るや、アルバートも2人の悪だくみに加わることを決めます。

 その後、3人は年金を取り戻すため、前科者の指南を仰ぎつつ、体力作りやアリバイ工作、銀行の下見などを念入りに進めます。

 しかも、3人は奪う現金を厳密に計算します。3人が「余命」と考えている合計年数(27年)を足し上げた上で、3人の年間平均支給額(4万5000ドル)を掛け合わせることで、121万5000ドルを銀行から取り戻すというのです。

 結局、3人の銀行強盗がどうなったか、過剰な演出も含めたコメディータッチな映画の詳細はDVDをご覧いただくとして、ここでのポイントは3人が怒った理由です。会社との「約束」の下、保険料をコツコツと支払ってきたのに、いざ老齢に達したタイミングで年金を受け取れなくなる「約束違反」に怒っているのです。

 実際、映画では「われわれの30年間の働きを無にする気か!」「年金を横取りか!」「40年も勤めたのに(注:年金を)銀行に奪われる」といったセリフが出てきます。少し理屈っぽく書くと、会社が長期的な視点に立ち、「将来は年金を支給する」と約束していたのに、これを会社再編のどさくさで一方的に破棄されたため、その約束違反に怒り心頭となったわけです。

 もちろん、銀行強盗を是認するわけではありませんが、この点は公的年金でも近いことがいえます。つまり、国民は強制加入の下、保険料を強制的に取られています。これを受け入れているのは「将来、年金給付を受けられる」という国民の期待があるためです。いわば国民と政府の「約束」の上に、公的年金保険制度が成り立っているのです。