締め切りとは
かならず存在するもの

仕事の段取りでもっとも大切な「締め切り」設定の正しいやり方水野学(みずの・まなぶ)
good design company代表。クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント
ゼロからのブランドづくりをはじめ、ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける。
おもな仕事に、相鉄グループ「デザインブランドアッププロジェクト」、熊本県「くまモン」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、イオンリテール「HOME COORDY」、東京ミッドタウン、オイシックス・ラ・大地「Oisix」、興和「TENERITA」「FLANDERS LINEN」、黒木本店、NTTドコモ「iD」、農林水産省CI、宇多田ヒカル「SINGLE COLLECTION VOL.2」、首都高速道路「東京スマートドライバー」など。著書に『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)、『センスは知識からはじまる』『アウトプットのスイッチ』『アイデアの接着剤』(すべて朝日新聞出版)などがある。

 グッドデザインカンパニーでは定期的に社内ミーティングを行ない、各チームのデザイナーがプロデューサーに、スケジュールの共有をしています。

 チームごとにいろいろなプロジェクトを請け負うことも多いので、会社として「締め切りを守れているか」や、全体の段取りを把握するためのものです。

 ぼくの妻でもあるわが社のプロデューサーは達人といっていいほど段取りが得意なのですが、このミーティングでは戸惑うことがあります。締め切りはいつかと尋ねると、「わからない」と答えるデザイナーがいるからです。

「クライアントさんは、いつがラフデザインを提出する締め切りなのか、言っていなかったんです。だから準備はしているんですけど…」

 クライアントから締め切りを言われなかったから、締め切りがわからない、というのです。しかし、これではいけません。

 たとえば舞台のパンフレットの仕事だとしたら、公演当日には印刷物として完成していなければなりません。公演日がわかっていれば、たとえクライアントが細かく締め切りを言ってこなくても、逆算してわかるはずです。

「○月○日までに入稿しないと、印刷が間に合わない。それには、○月○日までにはクライアントからデザイン案の承認をもらわなければいけない。それなら、○月○日までにラフデザインを完成させよう」といった予測はできるはずです。

 身内の話を書きましたが、これは案外、よくあることではないでしょうか。相手が言ってくれないのならば、自分のほうから「○月○日締め切りでいかがでしょう?」と相談するクセをつけましょう。

 自分で勝手に決められることでもありませんから、相手は「いや、もうちょっと早くほしい」と言ってくるかもしれません。早めに進行することになるなら、早く知っておいたほうがいいに決まっています。

上司に頼まれた案件で、「いちいち締め切りについて相談できない」というものもあるでしょう。それなら「仮」でいいから、自分ひとりで締め切りをつくっておくのです。

 締め切りとは、相手が言おうと言うまいと「ある」ものです。それなのに「締め切りがわからない」という状態でいたら、段取りなどできるわけがないのです。