RIZAPが提供する本質的価値は、「自己実現」
――買収する企業の共通項とは？
ムーギー・キムブルー・オーシャン・シフト研究所日本支部 代表
慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA（経営学修士）取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。
INSEAD時代に師事したチャン・キム氏に任じられ、世界中に拠点を有するブルー・オーシャン・シフト研究所の日本支部の代表として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』（ダイヤモンド社）『最強の働き方』（東洋経済新報社）、『最強の健康法』（SBクリエイティブ）などがある。』
ムーギー：御社は現在、ゴルフや英会話の事業もなさっていて、М＆Ａにも積極的です。一見シナジーがなさそうで、はたから見ればビジネスポートフォリオの無節操な拡大とみられるかもしれませんが、M&Aの際のポリシーや軸はあるんでしょうか。
瀬戸：まず事業ドメインが、重要だと思うんです。ドメインは何かと言うと、我々は「自己実現」なんです。
パーソナルトレーニング事業を始める前に、豆乳クッキーダイエットというダイエット食品を販売していた時期があり、その当時、美顔器の会社をM&Aしたんです。その時に、「何でクッキーの会社が美顔器の会社を買うんですか？」と、すごく聞かれました。
我々にとっては、豆乳クッキーダイエットも美顔器も自分たちが提供したい価値を実現する手段なんです。目的ではありません。
豆乳クッキーダイエットは、痩せたい、きれいになりたいと考える女性のニーズに応える手段です。美顔器も同じニーズに応えるんです。なので、我々にとっては、目的が同じで、ドメインが同じ会社にグループ入りしてもらったという認識だったんです。
けれども、その豆乳クッキーを販売していた時期に持ち込まれるM&A案件は、豆腐屋さんばかりでした。皆、手段を見ているんですよね。
我々が今行っている、パーソナルトレーニングもあくまで手段です。我々が提供しているのは、「自己実現」なんですよね。だから、グループ入りしている会社については、そのドメインに合うものという軸はあります。
ムーギー：なるほど、自己実現と捉えると、買収する企業の幅は、かなり広くなりますね。グループ入りされた様々な会社も、そのテーマだと共通項があるように思います。
瀬戸：そうですね。ただし、生活必需品などは絶対にやりませんね。必需品はマズローの欲求5段階説で言うと、必要最低限の欲求から購入に至るものが多いです。その部分は我々の領域ではないんです。
我々が提供しているものは、なくても死にはしない・困らないけれど、あることによって、自分の人生に意味や価値を見出せたり、自分のことを好きになれたり、自分に自信が持てたり…そういった無形の価値なんです。
ムーギー：確かに、高次の欲求に基づく部分ですね。
