完全個室のプライベートジムRIZAPなどを提供するRIZAPグループの代表取締役社長である瀬戸健氏と著者であるW・チャン・キムINSEAD教授に任ぜられ、『ブルー・オーシャン・シフト』の日本企業ケースを執筆したムーギー・キム氏の対談前編。レッド・オーシャンと思われたジム市場で、同社がなぜ急成長を遂げられたのか、その戦略を聞く。(構成:肱岡彩)

「やり方」はコモディティ化
――「やり切らせる」という新しい価値を提供

ムーギー・キム
ブルー・オーシャン・シフト研究所日本支部 代表
慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。
INSEAD時代に師事したチャン・キム氏に任じられ、世界中に拠点を有するブルー・オーシャン・シフト研究所の日本支部の代表として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。』

ムーギー:御社の主要事業であるジム市場は、競争が激しく、レッド・オーシャンと言われる業界だと思います。このような業界にあって、御社は異例の急成長を遂げていらっしゃいますが、競合と比べてどのような点が異なるのでしょうか。

瀬戸:従来のパーソナルトレーニングは、1回5000円のように、1回で終わってしまうものが多かったと思います。そのため、「その日に、どうトレーニングするか?」が目的になりがちです。

ですが、お客様にとって、「その日に、どうトレーニングするか?」は、さほど重要ではないんです。トレーニングを通して「痩せること」「きれいになること」が、本来の目的だからです。

ムーギー:なるほど、トレーニングは、あくまでも目的を達成するための手段に過ぎない。

瀬戸:そうです。短くても2ヵ月間、徹底的に寄り添って、トレーニングを続けていただきます。トレーニングの先にある、お客様の目的を達成するために、1回1回のパフォーマンスをどう上げるかを考えているんです。その考え方が、他社とは大きく異なると思います。

もう一つ大きな違いが、やり方を教えるのではなく、やり切らせることに重点を置いている点だと思います。

ムーギー:具体的にどういうことでしょうか。

瀬戸:我々は「トレーニングのやり方」「ダイエットのやり方」という情報を提供することに、それほど価値はないと思っています。情報だけなら、ネットや本に十分載っているからです。

「やり方」は、既にコモディティ化しています。そこで価値を持つのが、「やり切らせる」ということです。ダイエットに関する情報を集めても、ジムに入会してみても、いざやり始めると、なかなか続かず、目標を達成する前に辞めてしまうことは多いと思います。我々は三日坊主市場と呼んでいるのですが、「分かっているけど、出来ないこと」を、達成させようと考えているんです。

ムーギー:RIZAPは、やり切らせるコーチングビジネスだと。

瀬戸:はい。何事も目的を達成するためには、「やり方」×「やり切る」が必要です。結局、どんなに良いやり方があっても、寝ているだけで上達することはありません。実行が必要ですよね。そこには必ず「やり切る」が発生するわけです。けれども、この部分をサポートするサービスは、これまで存在していませんでした。