行政の障害者採用数増加が
民間企業を苦しめる!

 これまで一般企業は、着々と努力をしてきた。職域の開拓や、雇用率アップのために特例子会社を作るなど、受け皿作りを一生懸命行ってきた歴史がある。法定雇用率に満たない民間企業は、ペナルティーとして不足人数1人あたり月額5万円を国に納付する仕組みがあり、また、雇用状況に改善が見られなかった場合には社名公表されるケースもある。

 このように民間企業は厳しいペナルティーを科せられながら、障害者雇用に地道に取り組んできた。

 さらにここにきて、雇用率が一気に引き上げられ、企業側の苦悩が深まっている。個別に見ると、身体障害者や知的障害者の数が頭打ちとなっている半面、精神障害者で雇用を望んでいる障害者の数は増加している。

 こうした環境の大きな変化に対して、企業側が対応できる下地がまだ十分にできていないのだ。

 今後さらに雇用率が上がったら、有能な人材は残っていないし、新しい職域を提示するのも難しく、障害者のために切り出す仕事も、もはや限界だとの声も聞こえてくる。しかし、数値目標は容赦なく迫ってくる。結果、数字合わせのために無理やり採用する企業が続出して、障害者の青田買いになってしまうのだ。

 しかし、まだ十分成熟していない人材を無理に雇用すると、長く続かずに、結局企業にとっても障害者にとっても不幸な結果になってしまう。こうしたジレンマに苦しんできた民間企業からすれば、行政の雇用水増しは腹立たしい話である。

 さらに今回、行政の水増しを是正することが、民間企業を今以上に苦しめるとささやかれている。というのも、水増しを解消するために行政側が突然、採用に力を入れるとなると、民間企業を巻き込んで、さらに激しい障害者の争奪戦が行われる可能性が高いからだ。

 それにしても、行政側は民間企業には厳しく指導していたのにもかかわらず、なぜ自らは法定雇用率を守ろうとしなかったか。ある政府機関で働く、障害者枠で雇用されたB氏にその理由を聞いてみた。

「省庁の仕事は、上から降ってくる仕事を粛々とこなしていくという側面が強く、包括的に人材育成する土壌が弱いのです。良くも悪くもほったらかしといえるでしょう。そのような組織ですから、障害者の存在はあまり有益ではなかったりします。省庁においては、部下の育成というのは、あくまで個人の資質の問題であって義務ではなく、この人を育てたいと思うか、思わないかだけですから。民間企業のように、育てたりすることはまずないのです」