「アゴを合わせることで、どんなメッセージが伝わるのか?」
ボディランゲージの大切さを思い知るワーク<2>「アゴ合わせ」

 自分がいかに人の話をきちんと聞けてないか。それを痛感して心を改めたら、次はいよいよ、『「聞くだけ」会話術』の第1章で杉橋青年がチャレンジしていた、アゴを合わせる練習だ。
   これも2人一組になって、Aさんは、また「楽しかったこと」をお題に3分間しゃべる。Bさんは、ひたすら話を聞きながら、Aさんとアゴの動きを合わせる。
   注意点は、質問禁止。聞き役は、「ええ」「そうですか」などの相槌だけでOK。

 相手の話を辛抱して聞くという覚悟はできた。それにアゴを合わせるだけなら、簡単、簡単……と思ったら、ここにも意外な落とし穴が。
   実際にやってみるとわかるのだが、相手に合わそうとしていても、つい自分のペースでアゴを動かしてしまうのだ。

「このワークをすると、自分がいかに無意識でアゴを動かしているかがわかります。聞き手がアゴを動かす“うなずき”は、本来『聞いていますよ』『わかっていますよ』という意思表示のボディランゲージです。ところが、無意識のうちに動かしているので、コミュニケーションが苦手な人は、相手の話と関係ないタイミングでアゴを動かしているのです」

 もっと恐ろしいことに、自分のペースでうなずいていると、「あなたの話を聞いてません」「自分がしゃべりたいので早く止めてください」という合図になる危険性がある。
   たとえば、極端に早く何回も首を動かすうなずきや、異様にゆっくりなうなずきは、相手に「もういいから話を止めてくれ」というメッセージを送っていることになる。どうだろう? 身に覚えのある人もいるのではないだろうか。

 とはいえ、誰でも簡単にできるというのも本当だった。単に首を動かすだけなので、自分で意識して、しっかり集中していれば、難しいことは何もない。
実際、3分間のワークのうち、最初の1分か1分半くらいはとまどっていても、だんだん慣れてくると、多くの参加者が相手にアゴを合わせられるようになっていた。

「話している相手とアゴを合わせるのは、自分のタイミングではなく話し手のタイミングでうなずくということ。だから、より強くあなたの話を聞いてますよというメッセージを送ることができるのです。実際、テレビや雑誌の取材を受けていても、この人話やすいなあというインタビュアーは、本人のタイミングではなく、僕のタイミングでうなずいてくれています」

 相槌は、相手の話が終ってから打つものではなく、聞きながら打つもの。だからこそ、自分のペースではなく相手のペースに合わせることで、より効果的な「非言語メッセージ」が送れるようになるそして、それを自然な形で可能にするのが、「アゴを合わせるスキル」だったのだ