日欧各国と、「関税ゼロなどを目指した大がかりな貿易交渉を行なう」ことで合意したというのが現状で、当然ながら「米国は少し輸入を増やし、日欧は大量に輸入を増やす」ことで決着するのだろう。

 それにより、世界貿易は縮小ではなく拡大することになる。日欧にとっては不満は残るが、世界経済は発展し、その果実を主に得るのが米国だという結果が待っているわけだ。

 これは、メキシコやカナダ、韓国などとの交渉も、本質は同じだと考えていいだろう。だとすると、トランプ大統領の通商政策は、米国に大きな利益をもたら素晴らしい政策だということになり、「トランプ大統領万歳」となるのだ。

米中冷戦は米国勝利の可能性大
歴史に名を残すかも

 一方、米中貿易戦争は激しさを増しているが、これは日欧との関係などとは全く異なる。相手からオモチャを奪うのが目的ではなく、相手をたたきつぶすのが目的だからだ。

 米国は、中国が安全保障上の脅威であると位置づけ、「中国をたたいておかないと米国が覇権争いに敗れてしまう」との危機感を抱いている。しかも、「中国の急速な成長が、米国などから技術を盗むといった不公正な行為によってもたらされている」との認識も広まっている。

 米国は、敵が不正をしていると考えると、国内が一致団結して戦える国だ。しかも、自らの覇権がかかっているとなれば、真剣さが格段に違ってくる。つまり、米中は単なる貿易戦争ではなく冷戦なのであり、米国としては「肉を切らせて骨を断つ」戦いなのだ。

 これは、トランプ大統領が単独で行っているのではなく、米国議会の多数の支持を受けてやっていることだから、仮に中間選挙で負けても大統領選で負けても、米中冷戦の大枠は変わらないと考えておいた方がよさそうだ。

 そう考えるとトランプ大統領は、対中政策において弱腰だったこれまでの米国を、強気に転換させる原動力になったといえる。議会の姿勢が変化したとしても、やはり大統領がそれを推進するとすれば、それは大きなパワーとなる。

 しかも、こうした米中冷戦は、米国の勝利に終わる可能性が高い。それを主導し、米国の覇権を守った功労者がトランプ大統領だったということになれば、彼は歴史に名を残す大統領だったといえる時代がくるのかもしれない。

 冒頭でお伝えしたように、本稿はあえて米国民の視点に立って、トランプ大統領を礼賛するとどうなるかという“頭の体操”を試みたものだ。誤解のなきようにお願いしたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)