大手自動車メーカーのSUBARU(スバル)で不正発覚が相次いでいる。リーマンショック以降、北米市場の販売増で業界トップクラスの“稼ぐ力”を身に付けたが、その飛躍的な成長の陰で一体何が起きていたのか。信用失墜した六連星は、再び輝きを取り戻すことができるのか。 本誌・重石岳史

 7月のある日の夕刻、群馬県太田市のスバル群馬製作所本工場から、勤務を終えた従業員が一斉に出てきた。

 シンボルカラーの青地の制服を着たまま帰途に就く男性もいれば、私服に着替えた女性もいる。そのうちの1人に声を掛けた。

約4200人が勤務するスバル群馬製作所本工場(群馬県太田市)。スバルは“うみ”を出し切れるか。Photo by Takeshi Shigeishi

 「コンプライアンスの注意喚起? 確か数カ月前に紙でそのような呼び掛けを見た記憶はあります。でも目の前の仕事を覚えるのに精いっぱいで……」。年初から組み立て工程で働き始めたという期間従業員の若い男性は、流れる汗を拭いながらそう口を濁した。

 この群馬製作所で昨秋以降、スバルを揺るがす不正が相次いで発覚している。

 資格のない従業員が新車の完成検査を行っていた不正が日産自動車と同様に発覚し、その調査の過程で燃費・排ガスの測定値を書き換えた不正も判明した。