企業内のこうした閉鎖的な集団形成は、穀物貯蔵庫の「サイロ」に例えられる。05年にソニーの最高経営責任者に就いたハワード・ストリンガー氏は、当時のソニーの縦割り意識をサイロに例え、その解体を指示した。スバルの工場にも、専門外の人間にはうかがい知れないサイロが形成されていたのではないか。その中にいた人間は、あの若い期間従業員が語ったように「目の前の仕事」に忙殺され、自分たちがサイロの中にいたことにさえ気付かなかったのかもしれない。
だが現場の負担軽減は、人材配置や設備投資などの経営判断で可能だったはずだ。吉永氏に代わって6月に社長に就任した中村知美氏は、品質向上に向けた総額1500億円の投資を今後5年間にわたって行うと明言したが、それはもっと早く実行するべきだった。経営陣が現場の「創意工夫」に甘えていたのだとすれば、スバルの稼ぐ力は、実力が伴わない“張り子の虎”だったことになる。
スバルの元幹部は自戒を込めて言う。
「本社にいてはどうしても見えない、暗い部分があった。そこを見ようとする努力がわれわれに足りなかった」
六連星は、その輝きを強く放つほど、光が届かない闇の深さが増す。スバルが標榜する「真に正しい会社」に変われるかどうかは、自身に内在する“闇”に光を当てられるかどうかに懸かっている。