「歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン」「札束で頬を撫でられるマシーン」「自動的にハイタッチができるマシーン」など、「無駄づくり」をテーマに活動を続けているクリエイター・藤原麻里菜。『無駄なことを続けるために――ほどほどに暮らせる稼ぎ方』(ヨシモトブックス)を上梓した彼女に、前編「『YouTuber』はどうやって食べていってるのか」に続いて、作品づくりの裏側を伺った。(編集:WORDS〈竹村俊助+金藤良秀〉、写真:柳原美咲)
インスタ映えが嫌いなら行動に移そう
――いちばん気に入っている作品ってどれですか?
藤原さん 私は「インスタ映え台無しマシーン」がめちゃめちゃ好きで。インスタ映えしそうな写真を撮ろうとすると指が写りこむ装置です。
――それはどういうきっかけで?
藤原さん「インスタ映え」が流行りすぎて、「なんか、むかつく」って感覚的に毛嫌いされる風潮があったじゃないですか。だったら「むかつく」って言ってないで、行動に出たほうがいいのでは?と思ってつくりました。
――文句言ってるだけじゃなくて行動に出ろ、と。
藤原さん そうです。Instagramってやってみたら楽しいんですよね。でも、みんな「インスタ映えとか言っちゃって」って人の楽しみに対してぐちぐち言う人もいて。
――「ぐちぐち言わずに楽しめ」じゃなくて「ぐちぐち言うなら邪魔しろ」と。
藤原さん そうですね。ちゃんと行動に出そう、っていう。
個人攻撃に見えないように工夫する
――Twitterで「バーベキュー」って言葉がつぶやかれるたびにわら人形に五寸釘が打ち込まれる作品もそうですが、絶妙な「ポップさ」を出すのが上手ですよね。
藤原さん バーベキューを楽しんでる人たちがイヤな思いをするのもイヤだし。そういう人たちに怒られるのもイヤだし。そこは個人攻撃にならないように、気を付けてますね。
1993年、神奈川県横浜市生まれ。コンテンツクリエイター。文筆家/映像/工作。頭に浮かんだものをつくる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2016年、Google Japan主催のコンテスト、YouTubeNextUpに入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25,000人以上の来場者を記録。東京藝術大学先端芸術表現(非常勤講師)他、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・大阪、つくれ!ムサコ@武蔵小山TASKOなどで登壇。他に展覧会実績として、2018年、frontyard EXHIBITION「無駄づくり」展、SNS展「もしもSNSがなかったら」(のん、菅本裕子、小山健、能町みね子、燃え殻、最果タヒ、塩谷舞他と共に)など。著書に『無駄なことを続けるために』(ヨシモトブックス)。
――ネットで発信していると、気を遣うこともすごい多そうですよね。
藤原さん めちゃめちゃ多いですね。私、すぐ怒られちゃうんですよ。
昔ブログで日記書いてたんですけど、「RADWIMPS聴いてそうな大学生がいて、こういうことされてウザかった」みたいなこと書いたら、RADWIMPSのファンの方から怒られちゃって。
私はRADWIMPSもRADWIMPSを聴いてる人もバカにしてるつもりはなくて。「RADWIMPS聴いてそうな大学生」と、ちょっとふざけて書いただけだった。でも、ファンの方からすると、やっぱりひっかかりますよね。不快にさせてしまって、いまはそういう誤解が起きないように気を遣ってますね。
――変なことを言ってくる人を無視したりはしないんですか?
藤原さん 参考にはしています。心のなかでは無視しないっていうか。ちゃんと受け止めますよ。
「不快でした」みたいなことを言う人に従うつもりはないんですけど、なるべく不快にさせる量は減らしたい。このあたりは課題に考えてます。全員を不快にさせない方法はなくて、誰かしら絶対不快にしちゃうと思うので。
――ちなみにアイデアはメモしたりするんですか?
藤原さん めちゃめちゃします。
――「これおもしろい」って思ったらすぐ作品になる?
藤原さん 蓄積されていく感じですね。
「バーベキュー~」もTwitterでその様子を見たときに、1回目は別に何とも思わなかったんですけど、何回か経験して「あ、やっぱりなんだかもやもやするな」っていう気持ちに気づいたから、装置をつくったんですよね。
――あぁなるほど。閾値を超えると作品につながると。