振り返ったときに
後悔しない決断をする

福岡市長・高島宗一郎氏高島宗一郎(たかしま・そういちろう)1974年大分県生まれ。 大学卒業後はアナウンサーとして 朝の情報番組などを担当。 2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。 2014年と2018年いずれも、 史上最多得票を更新し再選(2018年11月現在)。熊本地震の際には積極的な支援活動と SNSによる情報発信などが多方面から評価され、 博多駅前道路陥没事故では 1週間での復旧が国内外から注目された。『福岡市を経営する』が初の著書となる。

  ケガをおしてでも土俵に上がる横綱の姿をしばしば見てきました。それは力士生命を短くする行為かもしれません。「無茶をするな」という声も多くあるでしょう。しかし一方で「単に選手生命が長ければいいのか」という哲学もあります。

 結局、横綱をはじめとしてプロフェッショナルが売っているものは「生きざま」であり「戦う姿」です。

 それは政治家も同じでしょう。リングに上がって殴り合いをしたくないなら、ボクサーをやめたほうがいいのと同じで、批判をされたくないなら職業としては政治家を選択しないほうがいい。もちろん闇雲にケンカをするのではなく、闘いはここぞというときだけです。

 毎日、朝起きると自分の前にはふたつの道があります。右に行くか、左に行くか。その1日の決断だけで大差はつかないけれど、1年365日の「右に行く」「左に行く」「右に行く」……という判断の積み重ねが今の自分のいる場所になります。

 私は時折、自分を物語の主人公に見立てて「この主人公にここでどういうセリフを言ってほしいか」「この主人公はどういう決断をしたら、多くの人が共感してくれるのか」を想像して、自分の実際の行動や判断の参考にしています。

 つまりいったんは地上にいる自分の立場を離れて、「鳥の視点」で俯瞰して「こちらのほうがいい」という決断をするのです。

「虫の視点」で、つまり地上にいる自分の目でリアルに山積する課題や困難を見てしまうと、安易な道を選びがちになってしまうからです。

 繰り返すことのできない人生だからこそ、振り返ったときに後悔をしない選択をしたいものです。

次回は、弱者が強者に勝つための秘策についてお伝えします。12/12公開予定です)