ここまでひどい例はそうないかもしれないが、会計検査院でも、今年4月、官民ファンド全般の運営状況の報告をしている。

 官民ファンドを運営する16法人に対して行われた政府出資などの額は8000億円程度だ。2012~16年のバランスシートが掲載されている13法人についてみると、11法人について出資金が欠けている状態だ。

 しかも、会計検査院が本腰を入れて調べても、その時にはもうプロジェクトなどが終了した後ということが多い。

 失敗が明らかな時、官僚がどういう風にするかというと、「まだ成果が出ていません」という言い訳を始め、責任者が表舞台からいなくなるのを待つ。

 予算査定や会計検査をする側も同じ官僚だから、怪しいと思いつつも、決定的な証拠がないこともあって、そのあたりは阿吽の呼吸で深く追及できない。

 こうして、いよいよどうしようもなくなった時に、休止や解散ということで処理される。しかし担当者はすでにいなくなっているから、責任の所在はうやむやのまま。もちろん失敗の原因などが検証されて反省材料とすることもない。

産業革新投資機構は
「官」でやってはいけないもの

 こうしたことから考えれば、産業育成をするために株式投資を行う産業革新投資機構は、もっとも「官」でやってはいけないものである。

 日本にはリスクマネーがないという。それは事実としても、そこに官が入る余地はほとんどない。無理矢理入ろうとすると、「市場音痴」の官ではできないので、民間人を入れる、それが官民ファンドである。

 そこで官ができるのは、カネをつぎ込んで、その監視と称して「天下り」を入れることぐらいなのだ。

 もともと産業革新投資機構の前進は、2009年に誕生した産業革新機構だが、この時は、リーマンショック後の企業救済や再生策の一環として受け入れられた。

 設置期間は15年とされ、2025年までだった。昨年それが9年延長され、2034年までになった。そして、今の産業革新投資機構が今年9月から発足した。

 本来であれば、この延長はすべきでなかった。そうすれば、産業革新投資機構もなく、こうした醜態をさらすことはなかった。9人の民間出身の取締役が辞任すれば、残る取締役2人は官僚出身者だが、もはや機構の運営はできないだろう。

 今回の事例は、やはり「官」では株式投資が無理なので、その偽装の官民ファンドもできないという当たり前の結果だろう。

 この際、経産省は、後任役員人事をせずにこのまま産業革新投資機構を“閉鎖”すれば、今回の事件も「結果オーライ」である。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)