先輩こそ、全力で「フォロワーシップ」を磨くべき
先ほどのエピソードで、山下さんと田上さん、どちらに問題があるかを問うても、詮無いことでしょう。年齢バイアスにとらわれた田上さんが、昔の先輩・後輩関係を持ち出したのもよくありませんし、山下さんのほうも上司として、リードの仕方をもっと工夫すべきだったはずです。
要するに、両者からの歩み寄りが必要なのです。
そこでここからは、次の2つの観点で考えてみることにしましょう。
(1) 先輩が「部下」としてできること――フォロワーシップ
(2) 後輩が「上司」としてできること――リーダーシップ
まず(1)に関してですが、たったいま見たとおり、年下の上司を持つ人、つまり「先輩部下」は、上司のマネジメント行動に満足していない傾向があります。もちろんその上司が実際にマネジャーとしてまだ未熟だという可能性はあるでしょう。
しかし、至らないところばかりが目につくのは、われわれ側のバイアスのせいもあるのではないでしょうか? その「年下の上司」がまだ若手だったころの時代を知っていたり、成長過程にしでかした大きな失敗を覚えていたりするからこそ、「彼/彼女はまだまだ未熟だ」という思い込みが、どこかにあるのかもしれません。
そうだとすれば、より長いキャリアを積んできたわれわれのほうが、まず歩み寄るべきなのです。「彼女はマネジャーにふさわしくない」「彼のリーダーシップは穴だらけだ」と批判する以前に、こちらからも建設的なアクションを取れないか、振り返ってみましょう。
ただ従うだけでは「真のフォロワー」とは言えない
そのカギになるのがフォロワーシップです。知恵袋、参謀、右腕、相談役……優れたリーダーは優れたフォロワーによって育ちます。とはいえ、上司から指示されたことに従い、仕事をこなすだけが、フォロワーの役割ではありません。年下の上司を持った「先輩部下」には、それにふさわしいフォローの仕方があるのです。
米国カーネギーメロン大学教授のロバート・ケリーは、フォロワーシップの行動モデルを5種類に分類しました。これは貢献力と批判力の高低に応じたマトリックスで構成されています([図表3-6])。
フォロワーというと、リーダーに逆らうことなく結果を出す従属者が頭に浮かぶ人もいるかもしれませんが、ケリーによれば、このようなフォロワーのあり方は、「従いすぎることによって組織あるいは自己をマイナスの方向に進めてしまう」のだと言います。
逆に、リーダーにとって有益なのは、貢献力だけでなく批判力も高いフォロワーです。しかも、ただ受け身に指示を受ける疎外されたフォロワーではなく、言うべきことはしっかり言いながら、リーダーの絶対的な味方であることを貫く――それこそが、リーダー・組織にとって有益なフォロワーだというわけです。