そんな背景もあって、最近さまざまな企業で導入されているのが、いわゆる1on1というコミュニケーション手法です。

1on1とは、ちょっとした困りごとや相談、進捗状況の確認など、話し合う内容を前もって決めずに1対1で行う面談のことです。上司・部下間のコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を高める効果があるということで、最近ではかなりの広がりを見せています。

「先輩部下」の立場にある人は、ぜひこの1on1の導入を検討してみてください。個人としての批判的な意見などは、あくまでも上司との1対1の場でこまめに伝えるようにし、チームの前ではリーダーの「絶対的な味方」でいるようにしましょう。そうすれば、山下さんと田上さんのようなすれ違いは、最小限に抑えられるはずです。

1on1は企業の施策として行われることも多いですが、インフォーマルなかたちでも行うことができます。最初は「何を改まって……」と互いに身構えてしまうかもしれませんが、それが当たり前になってくれば、自然な場になっていきます。

上司のほうには遠慮もあるでしょうから、ぜひみなさんのほうから「毎週月曜11時から15分ほど、ちょっと話しませんか?」などと提案してみるといいでしょう。

石山 恒貴(いしやま・のぶたか)
元後輩が自分の上司になったとき、「飲みニケーション」よりはるかに大切なこと

法政大学大学院 政策創造研究科 教授
一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科経営情報学専攻修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科政策創造専攻博士後期課程修了、博士(政策学)。一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。「越境的学習」「キャリア開発」「人的資源管理」などが研究領域。人材育成学会理事、フリーランス協会アドバイザリーボード、早稲田大学大学総合研究センター招聘研究員、NPOキャリア権推進ネットワーク授業開発委員長、一般社団法人ソーシャリスト21st理事、一般社団法人全国産業人能力開発団体連合会特別会員。主な著書に、『越境的学習のメカニズム』(福村出版)、『パラレルキャリアを始めよう!』(ダイヤモンド社)、主な論文に"Role of Knowledge Brokers in Communities of Practice in Japan." Journal of Knowledge Management 20.6 (2016): 1302-1317などがある。