リーダーには「徹底してたてつく絶対的な味方」が必要
このようなフォロワーシップのあり方を、立教大学大学院の梅本龍夫特任教授は、「徹底してリーダーにたてつく絶対的な味方」とひと言で見事に表現しています。スターバックス コーヒー ジャパンの立ち上げプロジェクトの総責任者を務めた梅本教授は、同社におけるフォロワーシップのあり方を、間近で体験することができたといいます。
スターバックスの創業者として有名なのはハワード・シュルツですが、創業期のこの会社の成功は、幹部だったハワード・ビーハーの存在なくしてはあり得ませんでした。ビーハーはまさに「徹底してシュルツにたてつく絶対的な味方」でした。
ビーハーは、どちらかというと素朴な現場主義者で、カリスマ性のあるシュルツとはまったく違うタイプの人物です。コーヒーの魅力にすっかりのめり込んでいたシュルツに対し、ビーハーは「スターバックスはコーヒービジネスじゃない、ピープルビジネスなんだ」と説き続けたといいます。つまり、人々にすばらしい体験を提供することが自分たちのミッションであり、コーヒーはその手段だというわけです。
彼は、リーダーであるシュルツのビジョンを引き継ぎつつも、視野を広げる役割を積極的に果たしました。シュルツとビーハーという2人のハワードが、かたやリーダー、かたやフォロワーとして、信頼関係を保ちながら切磋琢磨したからこそ、シアトルの小さなコーヒーショップは、世界的な企業へと飛躍できたのです。
「先輩部下」となった人は、まさにこのビーハーのように、どこまでもリーダーの味方でありながらも、単に指示に従うのではなく、より前向きなアイデアを積極的に提示していく姿を目指すべきです。
ベテランにこそ「1on1」が有効
前述のフォロワーシップのためには、定期的なコミュニケーションが絶対条件です。ただし、いわゆる「飲みニケーション」ではなく、あくまで仕事を中心とした対話を軸に考えるべきでしょう。
かといって、先輩部下からいちいち細かな「ホウレンソウ」をするのも煩わしいですよね。実際、分析データからも、そのことが確認できました。
[図表3-7]は、上司のマネジメント行動が、ミドル・シニア期の人たちの自走力に、どのような影響を与えるかを分析した結果です。
ご覧のとおり、「個人の課題を明確に指摘する」「些細なことでも声をかける」といったマイクロマネジメント(手取り足取りの細かい管理)は、個人の自走力に対して、かえってマイナス効果を及ぼすことが見て取れます。
また、先輩だからといって、「他メンバーと異なる扱いをする」ことも、じつは本人のためにはなりません。決して特別扱いはせず、あくまでも周囲のメンバーと平等に向き合いながら、ある程度の裁量を持たせて、「自分なりのやり方で仕事を進めることを認める」のが、経験豊かな先輩部下をマネジメントするときの基本です。