圧巻だった電撃訪朝
標準型ではない天才的な政治家

──小泉政権には、サーカスでいう「珍獣」も多かったということですね。ところで、小泉さんのサーカスの部分で言えば、なんといっても2002年の電撃訪朝が圧巻だったと思うのですが。

YKK秘録
山崎拓氏がYKKトリオの内実を記した『YKK秘録』(講談社)

山崎 拉致被害者が1人も帰ってこなかったら、完全な失敗でした。北朝鮮は、「拉致問題は存在しない、因縁をつけるな」と言っていたのに、突然認めて5人を帰した。これで国民の人気は沸騰しました。

 あれから16年です。安倍政権は、ブルーリボンを全閣僚につけさせて、「全員生還させる」と威勢のいいことを言っているけれど、1人も帰ってこない。消息も分からない。

 拉致事件は1977~78年にかけて集中的に起きました。小泉さんが5人を生還させたけれど、その他の人たちは41年間放置され続けているわけです。僕は、これだけ時間が過ぎても「全員生還」などと言うのは、逆に、国民に対する欺瞞だと思っています。

──その安倍さんを引き立てたのは、小泉さんです。まさに02年の訪朝時には、官房副長官に抜擢され、スター街道を歩いていました。今回の読売新聞の調査では、小泉さんを抜く長期政権の割には、小泉さんに大きく水をあけられて5位となっています。

山崎 小泉さんほどユニークな政治家はもう出ないでしょう。千両役者で、「政治は芸術」を実践した人でしたから。

 彼は極めて複雑な性格で、「自民党=経世会をぶっ壊す」と言って、経世会をあれほど弾劾するほど冷徹な一方で、ネポチズム(縁者びいき)なところもあった。親分だった福田赳夫さんの息子、福田康夫さんを官房長官にし、兄貴分だった安倍晋太郎さんの息子である晋三さんを抜擢して、「清和会」の血脈をつないだ。

 小泉さんは三世だし、顔立ちがいいから毛並みのいいサラブレッドに見えるけど、祖父は背中に入れ墨を背負っていたし、離婚も経験している。実際は大変な苦労人です。標準型ではない。

 しかし、彼の後の総理も、総理候補と呼ばれる政治家も、皆、標準型ですよ。安倍総理を筆頭に、石破茂元幹事長、僕の派閥の後継の石原伸晃(近未来政治研究会)会長にしても、特段、個性的なものは感じない。「平成の天才的な政治家」という言葉は、小泉さんのためにあるようなものではないでしょうか。