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特許戦争で得をするのは弁護士だけ!?
それでもアップル・サムスンが訴訟合戦を続ける理由

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第197回】 2012年5月24日
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 ただ、一般消費者にとって、こうした訴訟は見ていておもしろいものの、何らいいことはない。

 まず、訴訟に莫大なコストがかかっている。「特許訴訟で得するのは特許弁護士だけ」と言われ、両社にとっても多大な時間とエネルギーが無駄になっている。それに考えても見てほしい。そんな訴訟コストは、最終的には商品の価格に上積みされ、それを払わされるのは結局われわれ消費者だ。

 それに、こうした訴訟がイノベーションを阻むことにもなっている。そもそも現在の特許制度にも問題が多く、特許でカバーされる範囲があいまいだったり広過ぎたりするために、競合企業製品のどんなデザインや機能も訴訟ネタにできるようなところがある。訴訟に用心すれば、何ら新しいことができなくなる。

 また、この訴訟合戦には、一般消費者ばかりでなく、世界中の裁判所もウンザリ気味だと言われる。ビジネス上の競争の始末を公的な裁判所に持ち込んでいる面があるからだ。それに「きりがなさそう」な両社の闘いは、今回裁判に持ち込んだところで、やっぱりきりなく次が出てくるだろう。今回の和解協議の命令も、そんなところから出てきたわけだ。

 ジョブズは強硬路線だったが、現CEOのティム・クックは訴訟を好まないという発言をしたこともある。現在テクノロジー業界では、できるだけ幅広い特許を手にするための企業買収も行われているのだが、アップル対サムスンの訴訟合戦の行方がどうであれ、これは業界全体の特許競争を左右するものになることは間違いない。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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