平成最後の一年となった2018年。振り返れば、時代の変わり目を感じさせる出来事がたくさんありました。そして、たくさんのじょうずな伝え方も。
シリーズ累計131万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一氏が2018年に出会った、ステキな伝え方を発表いたします。(構成/辻井葉子)
10位「驚きと感動で、じんましんが出ました」
リリー・フランキーさん(俳優)/第71回カンヌ国際映画祭
出典:毎日新聞
それは、映画とおなじくらいに人間味にあふれた、あったかい名言でした。
第71回カンヌ国際映画祭で、是枝裕和監督の『万引き家族』が最高賞のパルムドールを受賞。日本中が歓喜に包まれるなか、主演を務めたリリー・フランキーさんが喜びのコメントを寄せました。
「驚きと感動でじんましんが出ました」
もしも
「たいへん驚くと同時に、感動しています」
だったら、これほど人々の心には響かなかったでしょう。
リリーさんのコトバが一瞬で聞く人の心をつかむ理由は、伝え方の技術でも説明ができます。それは、カラダの反応をあえてコトバにして熱量をあげる伝え方の技術「赤裸裸法」です。しかも、リリーさんが素晴らしいのは、「涙が出た」「鳥肌が立った」という聞きなれたコトバではなく、「じんましんが出た」というご自身のリアルなコトバで語ったこと。笑っちゃいけないけど、笑っちゃう、そんな絶妙な伝え方だったと思います。
9位「たくさんたくさんありがとうございました。本当に本当にありがとうございました。」
イモトアヤコさん(お笑い芸人)/安室奈美恵さん引退を受けて
出典:イモトアヤコさんのInstagram
「平成の歌姫」とも呼ばれた安室奈美恵さんの引退は、大きな話題となりました。
大ファンとして知られるお笑い芸人のイモトアヤコさん。彼女が安室さんに向けて、Instagramに綴ったのがこのコトバでした。
「たくさんたくさんありがとうございました。
本当に本当にありがとうございました。」
イモトさんの名言からも、伝え方の技術を学ぶことができます。それは、同じコトバを繰り返す「リピート法」。「たくさんたくさん」「本当に本当に」とリピートすることで、コトバが記憶にのこりやすくなるのです。さらに、文末を「ありがとうございました」と合わせているので、トリプルで「リピート」された強いコトバになっています。
イモトさんの溢れるような感謝の気持ちは、きっと安室さんにも伝わったと思います。
8位「寂しいんじゃなくて、市場にありがとうですよ」
仲卸業者の方/築地市場閉鎖
出典:FNN PRIME
築地市場が83年の歴史に幕を閉じたことも、時代の変わり目を象徴する出来事でした。長年、市場を支えてきた方にとっては、閉鎖、移転についてさまざまな思いがあったと思います。そんななかで、思わずはっとさせられたのが仲卸業の方のコトバでした。
「寂しいんじゃなくて、市場にありがとうですよ」
きっと私もふくめて、世間は何かしらネガティブな答えを予測していたのではないでしょうか。これまで基盤を築いてきた築地を去るのは、きっと寂しいだろう、納得していないのではないか、と。しかし、前を向いて豊洲で新しいスタートを切るために、最後は感謝でお別れをする。「ありがとう」という予期せぬコトバに、移転までのゴタゴタさえも吹き飛ばすような清々しさを感じました。