就職活動で
生涯所得が決定?

 一般的に、長期的かつ継続的な関係を前提とした日本型雇用慣行はバブル経済崩壊まで変わらなかったとされます。例えば、バブル期の就職活動の喧騒ぶりを描いた1991年製作の『就職戦線異状なし』という映画では、志望するマスコミ業界の内定をもらえない立川修(的場浩司)が楽観的な大原健雄(織田裕二)に対し、下宿で「焦んないんですか。この夏次第で生涯所得が決まっちゃうんですよ」と声を掛けるセリフがあります。

 この発言を見ると、最初に入った会社次第で「生涯賃金が決まる」と考えている時点で、転職を想定していない様子を理解できます。

 しかしバブル経済の崩壊を受けて、わずか2〜3年後に「就職戦線」は急速に崩壊。さらに長引いた不況は日本型雇用慣行にも影響を与え、会社は中高年齢者の雇用を削減することで、バブル後の経済不況を乗り切ろうとします。これは従業員にとって、後払いで受け取れる賃金をカットされること、つまり長期的な関係が続くことを期待していたのに、その約束が履行されないことを意味しました。

 さらに、ライフスタイルや雇用形態の多様化、成長率の鈍化、女性の社会進出といった変化を踏まえ、日本人全体の働き方が変わってきているため、働き方改革が問われるようになっているといえます。

 しかし、そもそもの問題として、メンバーシップのような日本型雇用慣行の恩恵を受けられていた人たちはごく一握りであり、そこから漏れる「非典型労働者」には異なる実態がありました。これが同一賃金同一労働を妨げてきた原因と指摘されています(山田久『同一労働同一賃金の衝撃』)し、非典型的労働者の分かりやすい例が女性の働き方と言えるかもしれません。

 女性の働き方と社会保障の関係については、第18回「安倍政権の看板政策『女性活躍』、看板倒れの危険が分かる映画」で取り上げましたが、ここでは2009年製作の『のんちゃんのり弁』で見ましょう。

 主人公の永井小巻(小西真奈美)は31歳女性。映画は冒頭、小説家志望で一向に働かない夫の範朋(岡田義徳)に愛想を尽かし、小巻が娘の乃里子(佐々木りお、通称のんちゃん)とともに家を飛び出す場面から始まります、そして、小巻は和服の着付けを教える実家の母、原フミヨ(倍賞美津子)の下に戻ります。