昔ながらの営業手法で増益を続ける名物理事長がいる一方、多くの信用金庫・信用組合の経営は厳しい。地域銀行との競争にもまれ、時代遅れのIT活用に乗り出す金融機関を探った。

 「帰っとらんか……」。山本明弘は、ある会社の前で仁王立ちしていた。時刻はすでに午前0時を過ぎており、事務所の中は真っ暗だ。

13年間にわたり広島市信用組合のトップを務める山本明弘氏

 事態が不意に動いた。山本が窓から事務所内を凝視していると、月明かりが一瞬、人影を浮かび上がらせたのだ。隣の部下に叫んだ。

 「わしゃここにおるから、お前は事務所の裏手に回れ!」