下層の人々は廃棄物を使い、人体と組み合わせてサイボーグを作る技術を発達させていた。人間の利用できる部位のうち、最後に残るのは脳である。ほかの人体ブロックは工業製品のスクラップを利用して作られている。

 じつに陰惨な光景だ。絵の表現もかなりどぎつい。内臓も血も脳漿もリアルに描かれている。このようにホラーやスプラッターの要素があるので、苦手な人は手を伸ばしにくいだろうと思う。じつは私もスプラッターは大の苦手で、映画や漫画もほとんど避けている。本作では脳がやりとりされ、流血もものすごい。ふつうは気持ち悪くなるはずだ。

 しかし、作者の表現はリアルでどぎついながらも独特な透明感があり、苦手な私でも引き込まれ、物語に没入させる画力がある。

アリータ
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

 物語の冒頭(第1巻)は、くず鉄町に暮らす医師のイド・ダイスケが廃棄物の山から少女の頭部を見つけるところから始まる。自宅にこの頭部を持ち帰り、脳が生きていることを確認すると、イドは少女を「ガリィ」と名付け、ボディを製作して1体の美少女サイボーグを作り上げる。

 ガリィの記憶は失われているが、どこかで学んだ格闘技「機甲術」を覚えており、素早い動きで実に強いことを自覚するようになるが、その由来や自分が何者かについてはまったくわからないままだ。物語はガリィの謎を追う旅でもある。

 イドは医師だが、裏の顔は賞金稼ぎの暗殺者でもある。ガリィもやがて賞金稼ぎになっていくが、その過程で「モーターボール」というゲームの選手となる。サーキットでモーターボールという不規則に動き回るボールを追い、ほかの選手と戦うゲームだ。