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「デジタルへの意識を変える」を
組織的に成し遂げる最善の方法

内山悟志[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]
【第89回】 2019年2月15日
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誰が旗を振るのか

 一昔前まで、カリスマ経営者がイノベーターであった。パナソニックの創業者である松下幸之助氏、ソニーの井深大氏と盛田昭夫氏、セコムの飯田亮氏など、数え上げればきりがない。彼らは、自らの発想でまったく新しい価値を創造し、何もなかったところから市場を切り開いてきた。では、今はどうだろうか。AI、IoT、仮想通貨などが台頭するデジタルエコノミーの時代に、現在の経営者が自らDXを起こすことができるだろうか。

 もちろん、現代にも大きな変革を断行し、市場を切り開いている経営者は存在する。しかし、「技術のことはよくわからない」「担当者に任せている」という経営者も少なくない。ちなみに、独立行政法人経済産業研究所の調査によると、国内企業の社長の通常交代時(解任または経営責任を取り辞任を除く)の平均年齢は、新任時で57.5歳、退任時65.2歳とのことだ(米国は、新任時50.8歳で退任時60.6歳)。

 もちろん、年齢が若ければITに詳しいとか、デジタル時代の潮流を理解していると一概にいえるものではない。しかし、上記の平均的な年齢の経営者が若かった頃は、パソコンを一人一台与えられたり、電子メールを当たり前のように使ったりする時代ではなかった。そのような世代が、デジタル技術の可能性や最新動向を正しく理解できるだろうか。

 また、欧米の著者によるイノベーションに関する書物では、経営者のリーダーシップの重要性が語られているものが多く見られる。そして、変革の推進手法はトップダウンに重きが置かれている傾向が強い。しかし、多くの日本企業にはこの手法はなかなか通用しにくいと言わざるをえない。経営者のリーダーシップを待っていたのでは何も始まらないのである。

 もちろん、イノベーションを全社的に推進していくうえで、経営者の理解と協力は非常に重要であり、不可欠である。しかし、実際にイノベーションのアイデアを出し、試し、試行錯誤を繰り返しながら推進していくためには、ミドル層や若手を含め、従業員一人ひとりが主体性を持って取組み、経営層を動かしながら進めていくことが求められる。

 DXによって自社がどこを目指すのかということも、社長一人や経営会議のメンバーが決めるのではなく、従業員一人ひとりがそれぞれの立場で考え、階層を超えて議論し、認識を共有していかなければならない。

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内山悟志[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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