2018年度は、国内企業のIT投資の増加傾向がリーマンショック以降最高の水準となった。また、製品/サービス分野では、IoTやAI、RPAへの新規投資意欲の拡大が確認された。今回は、2018年8~9月にITRが実施した「IT投資動向調査2019」の結果を踏まえて、企業のIT投資の動向を紹介する。
堅調ながら増加の見通しとなったIT投資
ITRは、国内企業におけるIT投資動向の包括的な把握を目的としたアンケート調査を2001年より毎年実施しており、2018年8~9月に実施した今回は通算で18回目を数える。ITRの顧客企業やWebアンケートの独自パネル会員のうち、国内企業のIT戦略やIT投資の意思決定に関わる役職者を対象にアンケートを依頼し、2504件の有効回答を得た。本調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向の変化に加え、IT人材の採用状況などについての質問を追加した。
まず、IT投資の増減に関する傾向から確認してみよう。2018年度(2018年4月~2019年3月)のIT予算は、前年度から「増額」とした企業の割合が34%で「減額」とした企業の割合が7%となり、2017年調査と同様の水準を維持した(図1)。
また、2019年度(2019年4月~2020年3月)に向けた見通しでは、「10%未満の増加」を見込む企業の割合が2ポイント増加しており、IT予算の増額が3割以上という傾向は維持されると予想される。
なお、このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資増減指数」を見ると、2018年度の実績値は「2.74」となり、前年調査時の予想値(2.43)を上回っている。2015年度以降は堅調な伸びが見られ、これはリーマンショック以降最高の水準となっている。2019年度の予想値は、「2.68」となり2018年度の実績値より下回るが、近年の前年予想値は実績値と同等かそれ以上となっていることから、企業において計画的なIT投資が定着していると考えられ、2019年も積極的なIT投資が実現できると期待される(図2)。