誰もが知る、都心の有名大学病院が、そんな無責任なことをしていたとは。怒りがこみ上げたが、そんなことよりもまず、Iさんをなんとかしてあげなくてはならない。

 さっそく相談したのが赤星隆幸先生だった。先生は、白内障における世界一の名医として知られている。網膜は専門外だが、きっと、信頼できるいい先生をご紹介いただけると考えた。

「右目については、難度が極めて高い手術になりますが、私ならできる。責任を持って治療させていただきます。左目は、網膜の専門家に再手術を委ねるのがよいと思います。技術的にも信頼できる先生を紹介したいと思います」(赤星先生談 以下、「 」内はすべて同)

 診察後、すぐに手術の予定が組まれ、治療開始。右目は赤星先生に、左目は網膜の名医の手術を受け、Iさんの目は、明るさと視力を取り戻すことができた。いずれも1時間以上の時間をかけ、丁寧に、根気よく執刀していただいたと、後日Iさんから聞いた。

 医療技術はどんどん進歩しており、流れ的には「ゴッドハンド」とか「スーパードクター」といわれている医師でなくとも、安心して任せられるような方向へ動いている。しかし、「やっぱり、スーパードクターはすごい」と、改めて思った。

手術件数年間1万件は
速さではなく高品質の証明

 赤星先生は、世界一多くの患者を“白内障による失明から救ってきた”眼科医だ。

 2015年には年間1万0398件もの手術を執刀し、ギネスブックに世界記録を申請。片目の所要時間は平均4分という圧倒的なスピードから「F1手術」の異名を取るが、単に速いだけでは、これだけの件数には届かない。

 なぜなら、白内障手術の所要時間は総じて短い。他のドクターでもだいたい10分前後と宣伝している。4分と10分、たった6分の差は、患者が「誰に手術をしてもらうべきか」を選ぶうえで大した問題ではないだろう。重要なのはちゃんと見えるようになり、かつ良好な状態が長く続くこと、要するに「質」だ。

 膨大な手術件数は、手術をめぐる事柄すべてにおいて最高峰の質を極め、追求してきたからこそ。速さだけを追求した結果ではないのである。