従業員不祥事の動機トップは
ダントツで「低賃金」

 そんなバカなことがあるのかと思うかもしれないが、企業危機管理の世界では、これはSNS登場以前の、はるか昔からある従業員不祥事の王道パターンなのだ。

 わかりやすいのが「バカッター」騒動後に発覚して、世間を騒がしたアクリフーズ(現・マルハニチロ)の冷凍食品に農薬が混入されていた事件だろう。

 当初、同社は安全管理を徹底していると内部犯行を否定していたが、フタを開ければ、犯人は生産ラインに携わる契約社員で、動機は「低賃金」への不満だった。事件が発覚する2年前、給与体制が変わったことで年収が大きく減っており、年収200万で月給は約14万と報じられた。

 もちろん、だからといって農薬を混入するなど許されるわけがない。同じ賃金でも文句を言わず、手も抜かずに真面目に働く方たちも、当時のアクリフーズにはたくさんいらっしゃったはずだ。この犯罪行為の責任はすべて、契約社員個人にあることは明白だ。

 だが、その一方で、この契約社員もそれまでは「テロ」に踏み切らず、まともに働いていたということを考えると、「低賃金」が愚かな行為の背中を押した、という動かしがたい事実もあるのだ。

 実は、こういう話は非常に多い。アクリフーズのように大ニュースにならないだけで、日本中で大なり小なり日常的に起きているのだ。筆者も報道対策アドバイザーとして、さまざまな企業で「従業員・バイト」にまつわるトラブルの対応にあたったが、動機は「給料・待遇の不満」が圧倒的に多いのだ。

 この傾向は「バイトテロ」にも見られる。2015年にSNSに不適切動画を投稿した「すき家」の女性バイトは、愚かな行為だけではなく、こんなつぶやきもしている。

「あーあ、クソバイトだ」

 皆さんも学生時代を思い返していただきたいが、バイトを「クソ」と思う理由は「賃金」だけではない。しかし、その不満というのは「時給アップ」でかなり緩和されるのも事実なのだ。

 だが、こういう話をどんなに声高に主張したところで、世の中的には、「バイトテロ」と「賃金」の因果関係はなかなか受け入れられることはないだろう。