大塚 匠氏大塚 匠(サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部課長)
Photo by Masato Kato

 発売から27年になるサントリー食品インターナショナルのコーヒー飲料「BOSS」(以下ボス)で異変が起きている。2017年4月に発売したペットボトルコーヒー、「クラフトボス」が初年度にいきなり1000万ケースの売り上げを達成、18年度は2度も計画を上方修正し、前年度比2.6倍の2600万ケースの売り上げを見込む。サントリーの飲料事業においても久々の大ヒットである。

「若い世代や女性など、従来の缶コーヒーとは異なるユーザーにアプローチできたのがよかった」と、大塚匠・サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部課長は言う。ペットボトル入りのコーヒーで、オフィスでの「ちび飲み(ちびちびと少しずつ飲むこと)」という新市場を開拓した。

 大塚は04年に新卒でサントリーに入社、ビールの商品開発を経て10年にサントリー食品インターナショナルに異動となった。最初の仕事は新規事業。炭酸とコーヒーをミックスした「エスプレッソーダ」を商品化した。発売1週目こそ、オレンジ味の炭酸飲料「オランジーナ」に次ぐ売上本数を記録したものの、すぐに失速した。失敗だった。

 14年4月から缶コーヒーの「ボス」の担当になった。当時はコンビニエンスストアが始めた100円のひきたてコーヒーに押され、缶コーヒー市場が3割縮小するなどといわれていたころだ。「斜陽市場の担当で終わるのは嫌だ」と奮起した。

 コンビニの店頭を観察しているうちに、これはコーヒー専門店やファミリーレストランでコーヒーを飲んでいた客をコンビニに呼び込んでくれたと前向きに捉え直した。そこで生まれたのが最高級豆を使用した「プレミアム・ボス」。同じ値段なのに、レギュラーコーヒーの品質を売りにして一定の成果を得た。