もし、あなたの家族や親しい人が被告人席に座ることになったとき、あるいは、裁判員裁判()に選ばれたとき、どんな証拠であれば有罪となっても納得、あるいは、受け入れることができるか、次の内容から考えてほしい(*注:本訴訟は裁判員裁判ではない)。

 今回、被告人医師の弁護士(以下、弁護人)は検察側証人に対する反対尋問で、乳房からの付着物の採取・移動・保管から鑑定までのプロセスについて、その手順の適切さを入念に確認した。

 例えば、「どんな状態の採取キットで、そのガーゼでどこから、どのように付着物を採取したか」「いつ、どんな袋にガーゼ片を入れ、その袋の表側にはどんな内容を記入したか」「いつ、だれが証拠資料の入った袋をどこからどこまで運んで、誰に渡したか」「科捜研では、いつどこでだれが資料の入った袋を受け取り、それはいつからいつまで、どこに保管されていたか」等、細かい質問だった。

 目的は、証拠鑑定のプロセスで他の微量な物質が混じったり、物質の劣化を招いたりした場合、結果に大きな影響をもたらすからだ。

 例えば、今回の唾液は口腔内細菌によって変性しやすい。このため、医学の実験では基本的に、採取した唾液はただちに冷蔵・冷凍保存する。

 移動の状況についても細かい質問が続いたのは、他の事件の証拠との取り違えやすり替えがなかったかを確認しておくためだった。

 ところが、事件の地元警察官から証言はあったものの、反対尋問では採取時の写真なし、保管時の写真なし等が明らかになった。それぞれの担当者がきちんと職務を果たしていれば、これまではいちいち客観的証拠を作成しておく必要はないということだったのだろう。

科学なら裁判期間内は
鑑定試料を残すべき

 弁護人はアミラーゼ鑑定やDNA型鑑定の信用性についても、細かく確認した。アミラーゼ鑑定では、アミラーゼ活性反応が陽性(青色になる)になったという写真はなく、鑑定書に「陽性」と記載があった。

 DNA型鑑定では、本訴訟でDNA量の数値の根拠となったデータ消去が問題視された。その理由はこういうわけだ。科捜研の研究員は乳房をぬぐったガーゼ片の付着物部分を半分に切って装置に入れ、DNA抽出液を作成した。