11月25日(日)~12月1日(土)は「医療安全推進週間」だ。医療安全といわれても、一般人にはピンとこないが、交通安全運動の医療版と思えばわかりやすい。ようするに、病院や診療所など医療を提供する場で、医療に係わる過程において発生するすべての「人身事故」──医療者の過誤、過失を問わず、患者および職員の心身への被害を防止するための強化・啓発週間、というわけだ。(医学ライター 井手ゆきえ)
横浜市立大学事件(1999)が契機
患者を取り違えたまま手術
2001年に医療安全推進週間がスタートしたきっかけは、1999年1月11日に発生した横浜市立大学医学部付属病院の患者取り違え手術事件だった。刑事裁判まで行った有名な事件である。
同院のHPに記載された事故対策委員会の報告や裁判記録などによれば、被害者のA氏(74歳、男性)とB氏(84歳、男性)はそれぞれ、11日の午前中に心臓疾患と肺疾患の手術の予定があり、同日同時刻に1人の病棟看護師によって入院病棟から手術室へと移送された。このとき、手術ホールでの引き継ぎで取り違えが起こる。A氏は「Bさん」として、B氏は「Aさん」と誤認されたまま、それぞれの手術チームが待つ手術室に送られた。
その後も、手術室付きの看護師、麻酔をかける直前の本人確認、検査所見と事前検査結果の照合など二重、三重のチェックポイントがあったにもかかわらず、2つの手術チームが全く識別を誤ったまま、間違った手術が行われてしまったのである。
ようやく、患者の取り違えに気づいたのは、6時間以上にわたる手術が終わり、集中治療室で経過観察が行われている最中だった。