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アップルはさまざまな方法で音楽をコントロールしやすくしてきた Apple

 「Apple Music」はアップルの音楽ストリーミングサービスで、現在5000万人の有料ユーザーが存在します。配信曲数も5000万曲で、基本は月額980円。6人までのファミリープラン1480円、学生向け480円のプランも用意しています。

 日本ではKDDIが初めてApple Music 6ヵ月無料キャンペーンを実施しており、米国最大手のVerizonも同様のキャンペーンを実施していました。またT-MobileはApple Musicを含む音楽ストリーミングのカウントフリーを提供しています。

 キャリア一体的に音楽ストリーミングをサポートしている中、アップル製品向けの色が強いApple Musicは、競合となるSpotifyやGoogle、Amazonに比べると分が悪いように見えます。実はAndroid版が提供されていたりするのですが。

●サービス戦略と拡大路線

 アップルの売上高の6割はiPhoneによるものですが、直近の決算でiPhoneだけが15%の大幅減となるなど、スマートフォンの高付加価値戦略や販売台数の維持が厳しい状況になってきました。

 そのためアップルはMacやiPadなどをふたたび輝かせる戦略に打って出たり、絶好調のウェアラブル&ホームの成長を加速させるなど、ハードウェアに関する脱iPhoneを急ぐと同時に、非ハードウェアのビジネスであるサービス部門の成長に期待を寄せています。

 「2016年の売上高を2020年までに倍にする」という目標は順調に達成しており、2019年第1四半期決算では初めて3ヵ月の売上高が100億ドルを突破しました。3億3000万人がなんらかのサブスクリプションサービスを利用しており、まだ伸びしろがあるとみられています。

 今後、アップルは映像サービスや雑誌の読み放題サービスなども追加すると見られますが、サブスクリプションサービスで最もわかりやすい例がApple Musicというわけです。

●iTunesの前例を考える

 そのApple Musicが、ハードウェアとして競合になりそうなAmazon Echoで使えるようになったというニュースは、驚きと納得が入り乱れたものでした。

 2018年12月、Apple Musicは突然Amazon Echoでの再生に対応し、AlexaにApple Musicのライブラリの再生を命じられるようになりました。2019年1月にはアップルのサイトにもサポート文書が掲載され、手順を知ることができます。

 アップルには音声アシスタントSiriがあり、これは現状アップルデバイス以外には門外不出の状態です。この点は、AlexaやGoogleアシスタントを他社製品に組み込めるようにしている競合とは異なる戦略です。

 もっともアクティブユーザー13億人のほとんどがSiriにアクセスできる状態になっている点は、どの音声アシスタントと比較しても十分に大きな規模を誇っていると言えますし、ユーザーが一挙にSiriに話しかけたらと考えると、できるだけiPhoneの中でSiriに処理させたい気持ちも分かります。

 SiriをサポートするHomePodというスピーカーも存在しています。直接的ではないものの、Amazon Echoと競合する存在と見ることができます。にもかかわらずApple Musicについては、競合製品でも使えるようにする対応をしたのです。

 アップルはハードウェア、ソフトウェア、サービスをできる限り連携させ、自社でベストな体験を設計できるように取り組んできました。一時期macOSが他社にライセンスされ、日本ではパイオニアやアキアがMac互換機を出していたこともありましたが、それも取りやめて自社でコントロールする方法に統一しています。

 一方、iPodはWindows版iTunesを用意することで大成功をおさめました。同時にiTunes Music Storeも、Windows版があったおかげで、デジタルダウンロードをCDに変わる音楽流通方法として定着させました。

 そう考えると、Apple Musicがアップルデバイスに閉じていること自体が、むしろこれまでのアップルの音楽ビジネスからして不自然に見えてきます。

●Apple MusicがGoogle Homeに?

 筆者は自宅にWi-FiにつながるSONOSのスピーカーを用意し、Apple Musicをスピーカーから直接再生しています。SONOSアプリでApple Musicの認証を取ると、わざわざiPhoneのミュージックアプリからAirPlayを選ばなくても、SONOSアプリから直接Apple Musicのライブラリを再生できるようになります。

 BGMを担うスピーカーとしては、この方法がベストだと思います。iPhoneを音楽ソースとしてAirPlayをしたりBluetoothで再生していると、iPhoneの通話などに音楽が邪魔されてしまいますし、出かけたらその部屋から音楽は消えます。

 できればスピーカーが自分でストリーミングを取得して鳴り続けていてくれた方がよいのです。その点HomePodやAmazon Echoは、Apple Music再生に最適な存在と言えます。

 さらに今後、ここにGoogle Homeも加わるかもしれません。うわさによると、Google Homeアプリの音楽サービスの追加画面に、一時的に「Apple Music」があらわれたのだそうです。

Apple Music Integration Possibly Coming to Google Home Devices

 いずれにしても、サービスとしてのApple Musicとしてスマートスピーカーへの対応はぜひすべきでしょうし、iPhoneユーザーをGoogle Homeに取り込めるなら、グーグルも拒む理由もなさそうです。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

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