怒りに任せて
部下を問い詰めた夜

神奈川県平塚にある横浜ゴムの研究開発施設神奈川県平塚にある横浜ゴムの研究開発施設

 事業所に戻ったのは夜7時を過ぎていた。オフィスに入るなり、樋口の怒声が轟いた。

「こらっ、そこに座れ!」

 まだ入社して5年にも満たないA君は、樋口のただならぬ様子に青ざめ、おそるおそるミーティングテーブルの席についた。

「今日はほんとにすみませんでした」

 樋口の前で頭を下げるA君に、樋口は鬼の様相で詰め寄った。

「お前、何が悪かったのか、本当に分かっているのか」

 “説教”と“問答”はその後何時間も続き、深夜にまで及んだ。樋口は振り返る。

「今だったらパワハラと見なされても仕方ないような、それくらいの勢いでA君を問い詰めましたね」

 樋口は、どんな気持ちでA君と向き合っていたのか。部下の成長を願って、あえて厳しい態度を取ったのか。あるいは、ただ頭にきて怒っていたのか。再び樋口に尋ねると「正直、後者の気持ちのほうが強かったですよ。僕、そんなに人間できてませんから(笑)。とにかく頭にきた。許せんと思った。このままじゃいかんと思った。それで怒りが爆発した。そういうことです」。

 頭にきたから怒った。これが樋口の正直な気持ちだった。