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NTTドコモ 安部成司プロダクト部長 筆者撮影

 今年、スマホ業界で最大の注目と言えば「完全分離プラン」の導入だ。

 3月5日には改正法案が閣議決定され、導入に向けて加速することになった。

 はたして、完全分離プランの導入によって、キャリアのスマホラインナップにはどんな影響ができるのか。NTTドコモ、安部成司プロダクト部長に話を聞いた。

 2月末にスペイン・バルセロナで開催されたMWC19。注目はなんと言っても、ファーウェイの折りたたみスマホ「HUAWEI Mate X」だ。画面を折りたためて、曲げればスマホ、広げればタブレットのように使えるのが特長だ。しかも5Gに対応しており、まさに5G時代の到来を象徴するようなスマホであった。

 またMWCの前週にはサムスン電子もフォルダブル(折りたたみ)スマホ「Galaxy Fold」を発表済みだ。

 NTTドコモの安部成司プロダクト部長は「フォルダブルのような新しいスマホが登場しはじめており、いずれお客様に提供したいと思う。フォルダブルスマホは未知数なところがあるが、形状を生かした機能、サービスと一体になって提供していく必要がある。そういったものができるかどうか、各ベンダーとこれからお話ができればと思う」と、導入に前向きだ。

 ただ、当然のことながら気になるのが本体価格だ。

●ファーウェイ問題「適正に対応」

 HUAWEI Mate Xは2299ユーロ、約29万円という値づけとなっている。さすがにキャリアが売るスマホとしては高額すぎるのではないだろうか。

 安部氏は「20万、30万といった値付けになると、もはや備品ではなく固定資産になってくる。さすがに一般の人がすぐに買えるモノではなくなっている。しかし、もし採用できた場合、どういったお客さんが購入するかを見極めたい。たくさん売れれば量産効果も出てきて、値段も下がるのではないか」と期待する。

 ファーウェイのリチャード・ユーCEOは「世界で200万台以上売りたい」と意気込んでおり、将来的には量産効果も出てくるかもしれない。

 ただ、気になるのは昨今のファーウェイ問題だ。米中貿易摩擦の発端として、アメリカではファーウェイ製品の締め出しが強烈だ。日本でも、その影響が出始めている。

 NTTドコモは昨年、HUAWEI P20 Proをキャリアのラインナップとして採用した。今後、ファーウェイ問題は、NTTドコモのラインナップに影響を与えるのだろうか。

 「ファーウェイは重要なパートナーであり、グローバル的にも技術力は高い。商品と価格のバランスが取れているように思う。世の中によいものをお客様に届けるのが我々の役目であり、ファーウェイとはこれまでとは変わらないお付き合いをしたい。ただ状況は変わることもあるので、適正に対応していきたい」という。

●製品レンジは「始まってみないとわからない」

 今年、日本市場では完全分離プランが導入される見込みだ。

 これまで端末を購入することによって得られていた割引が適用されなくなる。キャリアとしては完全分離プランの導入をどのように見ているのか。

 安部氏は「ネットワークと端末が分離されると一時的に端末価格は上がる。調査などをして市場がどう反応するか分析しているが正確なことは読み切れていない」と本音を明かす。

 一般には高額なハイエンド端末が売れなくなるのではないか、今後はミドルレンジが中心になるのではないか、と見られている。

 安部氏は「幅広いレンジで揃えていきたい。比較的、高機能でありながら、お求めやすいものを提供するのが我々の役目だと思っている」という。

 NTTドコモのラインナップを見てみると、グローバルメーカーのスマホだけでなく「MONO」や「M」、「らくらくホン」といったキャリアオリジナルのスマホも数多い。完全分離プランが導入されると、こういったキャリアスマホも消滅することになるのだろうか。

 「キャリアブランドのスマホは受け入れられている反面、我々専用モデルになることで、納入価格は上がる傾向にある。価格を下げようと思うと、グローバル端末をどう採用していくかになっていく。一定のセグメントはキャリアブランド、新しいセグメントはグローバルブランドを採用し、どういった売れ行きになっていくか。バランスをどのようにしていくかも、(完全分離モデルが)始まってみないことにはわからない」(安部氏)

●カードケータイなどは「継続的にやりたい」

 総務省は完全分離プランを導入することで、スマホはメーカーにまかせ、キャリアは通信サービスに徹して、とにかく安い料金プランを作れと言っているようにも思える。総務省は、中古スマホ市場を盛り上げることで、国民の端末に対する負担を下げようとしている感もある。

 しかしNTTドコモの場合、自社のショップ網があり、通信サービスと組み合わせた端末開発ができるという強みがあるのも事実だ。

 たとえば、昨年発売された「カードケータイ」なども、メーカー独自で企画・製造するのは難しく、NTTドコモというキャリアだからこそ製品化できたプロダクトと言える面もある。

 カードケータイのような「変態端末」も、完全分離プランの導入で姿を消してしまうのか。

 「約束できるか微妙だが、我々プロダクト部は、新しい市場を開拓する製品を企画して作って出していくのが役目と言える。カード端末は市場からの大きな反響を受けて、一定のセグメントには刺さった製品だった。ああいった製品を継続的にやっていきたいし、(後継機種は、売る・売らないも含めて)検討している」(安部氏)

 これまでの料金プランがあったからこそ、キャリアが独自に個性的な端末を企画したり、新世代の端末を早期に普及させることができたなどのメリットがあった。5G時代を目前にして、完全分離プランの導入によって、状況は大きく一変する可能性が出てきた。

 NTTドコモでもそのあたりの影響を読み切れていないようで、今後の端末ラインナップに頭を痛めているようだ。


ishikawa

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。