「経営トップから“何か今までと違う新しいことをやれ!”と言われました」。よく聞いてみると、事業開発や商品開発の経験のない人が集められ、まずは他社のオープンイノベーションの取り組みの情報を参考に、ベンチャー関係のカンファレンスに出席したり、「コワーキングスペース」といわれる起業家向けの共同オフィスの一角を借りたりしているという。

 さらに、製品やサービスのアイデアを外部から募る「アイデアソン」やベンチャー企業の事業提案を募集し、賞金を用意する「ピッチイベント」を自社で催すなど、活動を広げたのだという。

 こうした活動は、経営トップが言う「新しいこと」として分かりやすくて受けがいいので、多くの会社の「初めの一歩」としては定番だ。実際、コワーキングスペースにオフィスを構える日本の大企業が急増している。

 しかし、コワーキングスペース、アイデアソン、ピッチイベントなどは、金鉱掘りたちがはくジーンズのようなもので、それが金をもたらすわけではない。鉱脈にたどり着かなければイノベーションにならない。漫然とこれらを利用しているだけでは、何も起こらないのだ。

私利私欲のない支援

 そこで、ヒントを一つ紹介したい。鉱脈であるイノベーションを目指すベンチャー企業を発掘し、育成する仕組みである「アクセラレーター」だ。

 アクセラレーターもジーンズ会社と同じく、金鉱採掘者を相手にもうけようと思っているかというと、実際はそうではない。起業家が金を掘り当てることを純粋に支援している。

 アクセラレーターは起業希望者を広く募集し、応募した中から選ばれた人やグループに少額の資金を投入し、3~6ヵ月ほどの短期間で起業の第一歩を踏み出させる。

 特徴は事業の立ち上げを加速化させるために期間を決め、起業家の尻に火が付く仕組みになっていることだ。プログラムの最後には、外部のエンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)の前でビジネス提案の発表を行う「デモデー」がある。これは、プロのVCが実際に投資を行うかどうかを判断する真剣勝負である。

 同じような仕組みに「インキュベーター」があるが、こちらは事業のアイデアを出す時点から支援し、事業の卵がふ化するのを期待する。特に時間軸は決めず、事業は自然発生的である。

 アクセラレーターの草分けであり、実績でも群を抜くのが、Yコンビネーター(YC)と500スタートアップスである。YCは1800社以上に投資し、そのうち192社がエグジット(上場したり買収され、事業が成功したこと)、500スタートアップスは1700社に投資し、そのうち162社がエグジットしている。