「 Back to basics 」
味の基本に立ち返る思い

「あのキッシュは飲みものです!」<br />百戦錬磨の料理カメラマンが見た<br />伝説の家政婦・志麻さんの実像と<br />「感動三品」を全告白。

三木:はい。志麻さんのお料理を食べると、「 Back to basics(バック・トゥ・ベイシックス)」というような感覚がこみ上げてきますね。味や、料理をつくる時の心持ちの、基本に立ち返る思いです。

編集:Back to basics! まさに、この言葉を待っていた(笑)。

三木:この本に載っているお料理は、特別な日のごちそうも含めて、奇をてらったものが一つもないんです。
 志麻さんが純粋に「美味しいからつくっている」だけ。料理がつくり手の自己表現のようになってしまうずっと前の、あるべき姿です。
 毎日の食卓を前に、人はそんなに「今まで食べたことのないものを食べたい」とは思わないですよね。同じ料理を何度もつくる、それが家庭の味となって行ったはずです。
 この本にある「鴨とオリーブ」も、私にとっては何度も食卓に登場し、何度もつくった料理であり、いつの間にか忘れていた大事な料理の一つでした。

編集:すごくシンプルな具材で、志麻さん書籍史上最も少ない食材かもしれませんね。
では、最後に、「感動三品」の第3位の印象を教えてください。

「あのキッシュは飲みものです!」<br />百戦錬磨の料理カメラマンが見た<br />伝説の家政婦・志麻さんの実像と<br />「感動三品」を全告白。

三木:「クロタン・ドュ・シャヴィニョルのサラダ」ですね。
 フレッシュなグリーンサラダを敷き詰めたお皿に、カリカリに焼いたバゲット、その上にとろける濃厚な山羊のチーズ。完璧な三位一体です。
 たとえるなら、炊きたての白いごはんに納豆、白菜のお漬物的な組み合わせですね(笑)。無心で食べる、そういうお料理です。

編集:最後に志麻さんの魅力を一言で言うと?

三木:ひたむきな情熱を秘めた柔らかさ、でしょうか。

編集:本当に素敵なお仕事をさせていただきました。三木さん、本当にありがとうございました。

三木:こちらこそありがとうございました!