NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」など、テレビで話題沸騰の「伝説の家政婦」志麻さん。
あの志麻さんが、初めて書きおろした料理エッセイレシピ本、『厨房から台所へ――志麻さんの思い出レシピ31』が発売たちまち増刷が決まり、話題沸騰中だという。
レシピの背景にある波乱万丈のエピソードとともに、調理のコツも凝縮。ふだん家で食べたことのない「フランスのママン直伝のキッシュ」「梨リングフライ」「龍馬チョコレート」は絶品。さらに、「母の手づくり餃子」「おばあちゃんのお煮しめ」「けんちょう(山口の郷土料理)」のなつかしの味から、「ゆで鶏のシュープレームソース」「豚肉のソテーシャルキュティエールソース」「子羊のナヴァラン」「ローストチキン」などのフランス家庭料理、「フォンダンショコラ」「カトリーヌ先生のそば粉のクレープ」などのデザート、1歳の息子お気に入りの「鶏手羽元のポトフ」まで、実に多彩なレシピがあるという。
「3時間で15品」など、これまでのイメージとはまったく違う志麻さんが、あなたの前に突如、出現するかもしれない。
今回は、志麻さんが初めて鎌倉の地を訪れ、面白法人カヤックの施設でおつまみを振る舞うという情報を聞きつけた担当編集が、一路鎌倉へ!その突撃レポートをお届けする。(撮影・三木麻奈、取材/文・寺田庸二)。

志麻さんが「おつまみ」を振る舞う?

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 その日は特別な日だった。
 あの「伝説の家政婦」志麻さんの記念すべき誕生日だったからだ。

『厨房から台所へ――志麻さんの思い出レシピ31』の担当編集である私は、もう一つ、朝からワクワクしていることがあった。

 この日、志麻さんが「鎌倉」の地を訪れ、みんなにおつまみを振る舞うことを耳にしていたからだ。

「志麻さんがバースデーにおつまみ?」

 一体どういうことか?
 訝しげな表情で横須賀線に乗り込み、一路、鎌倉へ。

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 神奈川生まれの私にとって、鎌倉は思い出の地だ。
 小さい頃から初詣で鶴岡八幡宮へよく行った。
 だが、今日のパーティ会場はその東口とは反対の西口だという。

 駅から徒歩1、2分、「御成通り」を進んで右に入ると、ここかなあ? という場所があった。

 すると、そこに、志麻さんファミリーがいた。
 おお!! 「ど~も!」と志麻さんがあたたかい笑顔で迎えてくれた。

 この日、ふるまわれる、おつまみは「4品」。
 その中には、私が本書の「感動三品」の中でも、ベスト・オブ・ベストの「フランスのママン直伝のキッシュ」

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 さらに、志麻さんレシピ史上最も少ない食材、乾燥プルーンとベーコンだけでできる「プルーンのベーコン巻き」の姿もあった。

 この会場がなんとまあ、面白い。
 まさにその名も「面白法人カヤック」が運営する、キッチン付きスタンディングバーのようなパーティ会場。

 内装はナチュラルなウッディー(木)な雰囲気で初対面の人とも気軽に話せる。
 入口にはタイムカードがあり、1時間まで1000円、2時間まで2000円、3時間3000円でハイボールが飲み放題。

 その他、ビールや食べ物は持ち込みOKでワイワイ・ガヤガヤやれる。
 さらに、キッチンが完備。オーブンもあるから、料理をつくりながら対面で楽しく話せる。前の週は初対面同士の「合コン」が行われ、見事、カップルが誕生したとか。

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 今回は、この面白会場で、あの志麻さんがエプロンをしめて、料理をつくってくれた。

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 さすが鎌倉! これは面白いなあ。天狼院書店の三浦崇典社長も日々面白いことを考えているが、ここの経営者も面白いことを考えるなあ、と思いながら、志麻さんのマイ・ベスト・オブ・ベスト「フランスのママン直伝のキッシュ in Kamakura」を待った。

 ついにきた!
 あの神々しい輝き!
 このキッシュはとてもとても普通のフランス料理店では味わえないだろう。
 なにせ、志麻さんのご主人・ロマンさん(志麻さんより15歳年下のフランス人、非常に面白い)のお母さん(志麻さんの義母)が代々受け継がれたレシピを改良に改良を重ねた一品だからだ。
 私は本書『厨房から台所へ』の撮影時から、この通称・ママンキッシュのトリコになってしまった。
 寝ても覚めてもママンキッシュ!
 あのありえないレベルのチーズ投入量の結果がこれ! という数学的ロジックのもとに形成される、うまさ!
 今日は、それが思い出の地・鎌倉で食べられる。なんて幸せなんだ。
 いよいよ志麻さんがオーブンから出して、みんなが食べやすい大きさに、丁寧に包丁を入れる。この瞬間、会場からお!お!とどよめきのような歓声が湧き起こり、皆の視線が志麻さんに一気に集まる。ガヤガヤしていた会場は一変、息を飲む。
 この包丁さばきにも、やさしさが滲み出ている。
 そして、ついにできた!
 これが「フランスのママン直伝のキッシュ in Kamakura」である。

伝説の家政婦・志麻さんが<br />いざ鎌倉でおつまみを振る舞う?<br />サプライズ・バースデー・ケーキに<br />志麻さんは何を思ったか

 一口、かみしめた!

 カリッ! トロ~!
 うまい!

 このチーズのとろ~っとした弾力、何センチあるんだろう?
 あの弾力、高さ、キュービズム!
 素晴らしいの一言!
 気がつくと見ず知らずの人たちに、
「このママンキッシュ、ありえないですよ、食べて食べて!」
 とお節介おばさんのようになっていた。

 すると、あちこちから
「これは本当に美味しいですね」
「初めて食べました!」
 と興奮の津波が押し寄せてきた。
 やった!
 私だけではないんだ。
 食べてくれたみんなが、噓偽りなく、満足してくれている。
 これは本当に美味しい。どうしてもこれを読んだあなたに、どうしても食べていただきたい一品なのだ。