ガバナンスへの不安
保有株9割が担保で“個人の現金”に転換
ユーザーのZOZOSUITによるサイズ計測の難しさなどのリスクを当初から認識できなかったのか、との問いには「ちゃんと計測できているとのユーザーの意見もあるのに、できないという意見しかメディアに出ないじゃないですか。出ないですよ! 実際にはフィフティフィフティだと思いますけどね!」と激高した。
なおZOZOは昨年4月、自社株買いとともに、前澤氏を含む8人の取締役に対し、3100万株を上限に株式報酬型ストックオプションを導入する計画も公表し、6月に決定したが、興味深いのは、その90%以上を前澤氏一人に付与すると規定したことだ。まさに“前澤フルコミット”だと言いたいのだろう。
しかし、ある市場関係者は「上場オーナー企業でも、トップに90%以上の付与とは聞いたことがない」と指摘。ZOZO関係者も「ガバナンスは十分に利いているのか、資本市場をなめている、との批判は起こり得る」と認める。
もっともこのストックオプションは、将来のある3段階の時期までに、株式時価総額がそれぞれ2兆円、3兆円、5兆円に達することなどが行使の条件となっている。足元では7000億円程度であり、よほどの起死回生策がなければ行使できない見通しだ。
さらには、前澤氏が2月22日に提出した大量保有報告書の変更報告書によると、個人で所有する株式の実に9割を銀行に担保として差し出している。担保価値は3月11日の終値ベースで、2259億円となる。先述の売却益と配当収入だけでも相当の額になるはずだが、まだ足りないというのか。
一連のZOZOの決定や前澤氏個人の振る舞いに対する市場関係者の視線には、非常に厳しいものがある。
なお本誌はこの特集のため、ZOZOコミュニケーションデザイン室に対して、18年11月以降再三前澤氏本人へのインタビューを要請したが、実現しなかった。同室は、前澤氏本人が拒否したと説明している。