野心的な中計とZOZOSUITの話題性もあり、当時の株価はうなぎ上り。7月には4800円台に達した。一方で同月に公表された、ZOZOの19年3月期第1四半期決算では、決算短信の貸借対照表に、短期借入金240億円が計上されていた。
つまり、前澤氏個人に約244億円のキャッシュが入り、ほぼ同時期にZOZOが外部から240億円の借り入れをした事実は、公表資料より明らかなのだ。
4月27日に公表された自社株買い方針の適時開示資料でZOZOは「企業価値の最大化を図りつつ、株価水準を勘案しながら、機動的に自己株式の取得を行うことが株主利益に資するとの判断に至りました」と記載。前澤氏だけでなく、あくまで株主全体への還元策だというわけだ。
その後前澤氏は、9月にイーロン・マスク氏が率いる米スペースX社の宇宙船による個人としての月旅行計画をぶち上げる。19年の年初には、私財からの総額1億円の「お年玉」キャンペーンを実施。そして同じころ、2機目のプライベートジェット機購入計画をテレビ番組で明らかにした。
もちろん、創業者が自社の株式を手放して現金化するそのこと自体が問題だとは言わない。
しかし肝心の株価は、PB事業の先行きが危ぶまれた秋ごろからじりじりと下降。中計の未達が公表された1月末以降は2000円台を下回り、3月上旬でも2000円台前半だ。
要は、ZOZOが前澤氏個人から自社株を高値つかみで取得した形だが、財務戦略として適切だったのか。柳澤孝旨副社長兼CFOは本誌の取材に「中計発表時は、PB事業の売上高が計画通り増えると想定していたし、自社株買いをしても、将来的に株価は当然上昇すると考えていた」と説明した。