【症例2】

 40代男性。腰痛を中心とする全身の痛みを訴えて来院。

 第一印象は有能でバリバリ仕事するビジネスマン。強度のストレスを抱えていたが、うつ状態ではなかった。

 腰痛を感じるようになったのは会社で昇進し、部下を持った時期からだった。

 部下に仕事を任せられない。うまく指示ができず、仕事の仕上がりにも満足できない。

「どうしてもっとちゃんと言ってくれないんですか」と言われるが、逆に、その意味が分からない。つい大声を張り上げると「パワハラ」と責められる。

「これなら自分ひとりで仕事をしたほうが早いし、楽だ」と思い、部下の分まで仕事を抱え込み、帰宅は連日深夜になったが、部署の業績は伸びず、上からは「なぜあれほどデキる男なのにできないんだ」との声が聞こえてくる。

 オーバーワークと極度のストレスが腰痛を引き起こし、男性は限界を感じていた。

 北原教授は男性の現病歴・既往歴から、発達障害を強く疑った。

 発達障害には、非常に優秀でありながら何かの能力が抜け落ちている場合がある。この男性もまさしくそうだった。職人気質のスペシャリスト。非常に几帳面で、1人でコツコツと仕事するのは得意だが、部下のマネジメントをする能力はなかった。

 要するに、管理職には向かないタイプ。

 診断を確定するためにはさらなる検査が必要だった。

「あなたには、発達障害があるものと思われます。非常に優秀な反面、空気が読めない、いわゆる“コミュニケーション障害”です。そのため生きづらさを感じて、腰痛が起こっているのです。

 診断を確定するために、検査を受けてください。あなたの腰痛治療の第一歩は発達障害の治療から始めなくてはなりません。自分が発達障害であることを受容し、優れている部分、落差がある部分はそれぞれどこかを認識し、それに対処することが必要です」

 しかし残念ながら、男性は検査を受けず、発達障害であることを受け入れないまま、ドロップアウトしてしまった。