長期保存も可能
消費電力も小さい

 山田は、ユーザーに対して無料で冷凍技術についての相談に乗ってきた。その際に、凍眠がそのユーザーに必要ないと判断すれば、無理に販売することはせず、ユーザーの抱えた課題に対する助言をしている。こうした姿勢もあって、凍眠は販売後にクレームをつけられたことはない。

 凍眠のような液体を利用した急速冷凍機が普及していけば、物流や小売りの業態が変化すると、山田は考えている。

 例えば、漁港で水揚げされた魚を即座に急速冷凍して出荷すれば、鮮度をほとんど落とすことなく消費者の元へ届けることができる。長時間の保存も可能なため、輸出にも利用できる。

 実際に、シンガポールの水産関係者に日本で冷凍した魚を送ってみたところ、当初「冷凍物はしょせん冷凍物」と高をくくっていた現地の関係者が、冷凍して解凍した魚と生の魚を区別できなかったという。

 地方創生大臣だった2016年に石破茂は、テクニカンを訪れ、その冷凍のスピードと鮮度に感服し、「地方の水産業を活性化し、地方創生に役立つ技術」と評価した。

 スーパーの売り場の在り方を変える可能性も秘めている。現在、鮮度を優先するために、多くのスーパーでは店舗で魚や肉を加工して売り場に出している。時間がたつと鮮度が落ち、値引き販売をする。売れ残れば破棄するしかない。

 しかし、急速冷凍機を使えば、工場で一定量まとめて冷凍した食品をパック詰めして店頭に並べればよい。店頭で加工する人手が必要なく、保存も利くので廃棄ロスもなくなり、コストを削減できる。すでに、テクニカンに大手のスーパーが視察に来ている。