日本の政治家がニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事にどの程度登場するのかを調べてみよう。ここでは、首相経験者を取り上げることにする(終戦直後の期間については省略)。

 下記【表1】の「NYT記事数」欄は、その人の名が含まれている記事の総数を示す(期間は限定していない)。

 断然トップなのが小泉純一郎で、記事総数は2万近くになっている(以下、人名の敬称略)。5000を超えているのは、彼の他には、橋本龍太郎、宮澤喜一、中曾根康弘だけである。

 アメリカの知識人に「日本の政治家で知っている名をあげよ」と問えば、おそらくこの4人の名があがるだろう。その他の首相経験者の名を知っているのは、かなりの日本通ということになるのではないだろうか。講和を実現した吉田茂が1000に及ばず、ノーベル平和賞の受賞者佐藤栄作や、日本では誰もがその名を知っている田中角栄が1000をわずかに上回るだけというのは、日本人にとっては、やや意外な結果だ。

◎【表1】ニューヨーク・タイムズに現れる首相経験者の記事数(2008年7月25日現在)
表1

 ところで、新聞記事に登場する回数は、首相在任期間とも強く関連していると思われる。そこで、首相在任日数1日当たりの記事数を計算してみると、【表1】の「1日当たり記事数」欄の数字になる。

 在任期間が短い人のほうが1日当たり記事数が多くなるバイアスがあるように見えるが、その点も留意した上でこの数字を眺めてみると、小泉純一郎が格別高いわけではない。橋本龍太郎以後の首相経験者は、誰も1日当たり記事数が6件を超える水準になっている。そのなかで最も多いのは安倍晋三だ。小泉純一郎の総記事数が多いのは、首相在任期間が長かったためかもしれない。

 アメリカの政治家がしばしば小泉の名を口にすることから、彼のスタイルがアメリカ人好みだと言われることがある(たとえば、「06年7月のアメリカ訪問の際にブッシュ大統領とプレスリーの生家を訪れたときのパフォーマンスがアメリカ人好みだ」などと言われることがある。もっとも、これを伝えるNYTの記事はかなり辛らつだが)。しかし、ここの数字からは、そうした仮説は確かめられない。