段取りとは「想像力」である

クリエイターこそ「段取り」が必要だ<br />―水野学×佐渡島庸平水野学(みずの・まなぶ)
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント/good design company 代表
1972年 東京生まれ。1996年 多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。 1998年 good design company 設立。ゼロからのブランドづくりをはじめ、 ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける。
著書に『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)、『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)、『センスは知識からはじまる』『アウトプットのスイッチ』『アイデアの接着剤』(すべて朝日新聞出版)などがある。初の作品集『アイデア特別編集 good design company 1998-2018』(誠文堂新光社)も発売中。

佐渡島 こういう経緯があって、起業してから「水野さんとしっかり仕事したいな」とずっと思っていました。それで2018年、10〜11月くらいからプロジェクトを一緒にやり始めて、そんななか『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』が出版されたんです。さっそく読んでみたら、プロジェクトの進め方がまさに本に書いてあるとおりだった(笑)。
こっちが頼んだことが打ち返されて、違う提案が来て……キャッチボールのようなやりとりはまさに「段取り」そのもの。読みながら「今、これが(実際の仕事の現場で)起きている」と、二重の楽しさがありましたね。

水野 たしかにこの本のとおりにやってるんですよ(笑)。
とはいえ、普段から「段取り」というものを体系立ててやっているからこの本が書けたわけではなくて、自分でなんとなくやっていたことを、編集者さんのおかげもあって、まとめることができたんです。「段取り」という考え方や手法は、この本ではじめて自分の中で体系化され言語化されたんです。
だから、例えばうちのスタッフに「いや、そうじゃなくてさ、こうじゃん」とか言うと「あ、何ページぐらいに書いてあったよな……」と、思い出すみたいなんですよ(笑)。やっぱり、この本のとおりにはやっているんですよね。だからこそ、ちょっと恥ずかしいんですけど。
記憶力のいい人と一緒にいると「本の○ページに書いてあったこと、本当にやってるんだな」って思われたりして……(笑)。

佐渡島 著者は本に書いたことを本当にやっているのか、見られますよね(笑)。

水野 見られます(苦笑)。でも、まさに本に書いてあるとおりで「段取りには『前』がある」という話なんです。結論から言うと、段取りは「想像力」なんですよ。
エレベーターに乗ったらどのボタンから押すのがいちばんいいのか? もし「牛乳、アイス、スイカ、するめイカを買ってこい」と言われたら、どれから買いに行くのがいいのか? そこを考える。予想、予測するのが「段取り」なんですよね。
でも「予測できれば苦労しないよ」というのが、段取りできない人が言いがちなパターン。うまく段取りするには「そこに対しての造詣が深い」とか「資料を集めてすごく勉強する」とか、そういうことで予想がしやすくなっていくと思うんです。本にはそういうようなことが書かれています。

佐渡島 想像力といえば、自著『ぼくらの仮説が世界をつくる』では、「世界は誰かが思い描いた『仮説』でできている」と書きました。スマホやインターネットにしたって、誰から「こうするとハッピーになるぞ」と思い描いた「絵」、つまり仮説から生まれたものだと思うんです。

水野 たしかに。デザインもそうですが、広義の発明って「想像力」や「仮説」から生まれるものですよね。そうしたものを生み出す力をつけるためにも、「段取り」は良い訓練になりますね。

※対談の続きは4/16公開予定です。