日々膨大な仕事をこなす一流のクリエイターは、どのように仕事を進めているのでしょうか?

くまモン、相鉄、Oisixなど、多くのプロジェクトを手がけるクリエイティブディレクター・水野学氏。水野氏が大切にする仕事の基本は、意外にも「段取り」とのこと。仕事を効率的かつ高いクオリティでやり遂げるためには、「段取り」が欠かせないといいます。今回はストレスなく仕事を進めるための、マルチタスクのコツについてお伝えします。

これからの仕事の基本である、「段取り」の秘密を全公開したのが『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)。この連載では本書から一部を抜粋・再編集し特別公開します。<構成:須崎千春(WORDS)、編集部>

「マルチタスクをこなす」というのは「同時に仕事をこなす」という意味ではない!?

一度に複数の案件のことを考えない

 マルチタスクがいいとされ、一度に複数の案件をこなせる人が優秀という風潮があります。ぼくはそうは思いません。

 しかし実際には、複数の案件が並行して動いています。相鉄の車両デザインをしながら、焼酎の蔵元のデザインを手がけつつ、代官山の文房具店と大手スーパーと、和の小物のプロデュースをする…という具合です。

 どのようにしているのか?  ぼくは「今日の午前中の時間ボックスに『相鉄の制服について考える』というコマを入れた」という場合、午前中は、他のことはいっさい忘れて、相鉄の制服について「だけ」を考えます。

 その間、「ああ、あの蔵元のパッケージはこんな感じがいいかな」と別の仕事について思い浮かぶのは雑念とみなし、ひたすら「相鉄の制服」に集中する。そして、別のコマが入っている時間になったら、「相鉄の制服」についてはパッと忘れてしまいます。これはぼくが不器用で、複数のことを考えていると集中できないせいでもあります。

 学校に行っていた頃、授業は時間割で区切られていました。みんな体育の時間に国語については考えなかったし、たとえ必死に理科の実験をしていても、チャイムが鳴ればパッと音楽の時間に切り替えて合唱をしていたはずです。これと同じことを、仕事についても行なえばいいのです。

 問題は、学校と違って会社では、電話がかかって来たり、「これはどうなっている?」と上司に声をかけられたりして中断が入ること。

 電話や上司は「邪魔者」ではなく、仕事の一部なので受け入れるしかありません。外的要素はやむを得ないから、せめて自分の中では「一度にひとつの仕事に集中する」というルールをつくりましょう。

 また、「今日はほんとうに集中したい」というときは、思い切ってカフェなどに場所を移動するなどの工夫も考えてみましょう。

「マルチタスクをこなす」というのは「同時に仕事をこなす」という意味ではなく「ひとつの仕事に集中し、他の仕事に移っていくこと」なのです。