私たちの仕事や生活の中にある膨大な量の物的資産や、経験と勘に頼って行われてきたアナログプロセスが、さまざまな領域でデータ化され始めている。これらのリアルデータはビジネスや社会をどのように変えていくのか。企業や個人はどう対処すればよいのか。東京大学・森川博之教授の最新刊『データ・ドリブン・エコノミー』(ダイヤモンド社)より内容の一部を公開する。

海兵隊として飛び込んでいくことが重要

 企業がデジタル変革を推進するのは、新規事業を進めるケースと似ている。企業経営にあたって、業績の上がっている分野の知を継続して深める「知の深化」と、新しい道を進むために知の範囲を広げる「知の探索」の両面を、バランスよく行っていかなければならない。「両利きの経営」と呼ばれるものだ。

 これからのデータ・ドリブン・エコノミーの時代には、新しいことにチャレンジしていかなければならない。当然、それは知の探索フェーズと位置づける必要がある。この知の探索フェーズでは、アメリカの「海兵隊」のあり方が参考になる。

 このときの海兵隊には、二つの意味がある。

 一つ目は、フットワークが軽い組織という意味だ。陸軍、海軍、空軍の機能がコンパクトに集められた海兵隊という組織は、真っ先に最前線に投入される。機動力が求められるため、指揮命令系統が簡素になり、フットワークの軽いフラットな組織となる。

 二つ目は、積極的にリスクを負う組織という意味だ。戦況がわからないなかに飛び込んでいくことから、海兵隊の死亡率は他の軍隊に比べてかなり高い。だからこそ褒められるし、ステイタスもある。デジタル変革も、やったところでうまくいかないことがほとんどで、成功する確率は限りなく低い。

 しかし、その失敗の積み重ねがあってこそ成功への道が切り拓かれていく。失敗しても褒めなくてはならない。経営者や上に立つ人たちは、そうした意識を持って変革を進めていくことが大切だ。