知の探索はオープンイノベーションが最適解
デジタル化を進めるには、エコシステムを構築することが重要だ。
たとえばトイレ業界の企業がデジタル化を進めるとき、普通に考えると便座にセンサを付けて誰が座ったか把握したり、便器にセンサを付けて排泄物で健康診断をしたりするということが思い浮かぶ。しかし、それだけでは小さいデジタル化になってしまう。健康診断に絡めて生命保険会社が加わってくるなど、他の関連業界が絡んだエコシステムができれば、より大きなデジタル化となって、新たな価値が生まれやすくなる。ネストがサーモスタットのAPIを公開したのも、エコシステムをつくるためだ。
こうしたプラットフォームになるような仕組みを考えていくことが重要だ。その手段として、オープンイノベーションが考えられる。これをうまく構築できる人や企業が、デジタル化の推進には必要になってくる。
NTTドコモのアグリガールが大分のIT企業リモートとコラボレーションして「モバイル牛温恵」をスタートしたが、畜産業者に普及させるにはこの2社だけでは不十分だった。大企業とはいえドコモは農業界ではブランド力がなく、大分のリモートに至っては名もない地方の小さな会社という位置づけをされてしまっていた。
畜産業者に営業に行っても、いまひとつ反応が鈍かった。そこで、アグリガールはミッシングピースがJAであることに気づき、JAを巻き込むために説得しに行った。その結果、JA、ドコモ、リモートというエコシステムが構築され、快進撃が始まった。
デジタル化を進めるうえでは、そうしたミッシングピースを見つける作業も重要だ。IoTは単体で行うイメージがあるが、単体で頑張っても小さく終わる可能性が高い。大きくできるかどうかは、エコシステムをつくれるかどうかにかかってくる。
現代は、仕事が専門化しすぎて社内でも事業部が違うと会話が成り立たない。同じ業界でも、別の会社との会話は疲れる。異業種になるともっと辛い。それでもデジタル化を進めるには、ますます異業種との連携が重要になる。
こうした厳しい状況では、多様性が重要だ。多様性をしっかりと素直に受け入れられないと、異業種間連携はできない。