しかし、介護士の場合は事情が異なる。他産業と比べて労働条件が良くないから労働者が集まらないことが明白なのだ。介護は重労働であり、ハラスメントを受ける可能性も高いにもかかわらず、所定内賃金が労働者全体よりも大幅に低くなっている。これでは労働力不足も当然である。

 それならば、介護士の待遇を改善して労働力を集める必要があろう。筆者は介護の現場を知らないので、具体的な待遇改善について論じることはできないが、一つだけ筆者でもわかるのが賃上げである。重労働でつらい仕事でも、それに見合った高い賃金を払えば、労働力は集まるに違いない。

 しかし、介護報酬は介護保険料の中から支払われていて予算に限りがある以上、安易に賃上げをする事はできない。

介護サービスの提供は
政府の義務と考えよう

 一般企業であれば、労働力不足であっても賃上げをせず、客を取り逃がして収益チャンスを逃したとしても、自己責任で済む。「もしかすると、賃上げをしても労働力が集まらず、賃上げの分だけ収益が悪化するかもしれない」という可能性を考えながら、経営者は賃上げの可否を判断することになる。

 しかし、介護保険の場合は、「介護が必要な人に、労働力不足を理由に介護サービスを提供しない」自由はない。介護を必要とする人に介護サービスを提供するのは、政府の義務だと考えられているからだ。「運の良い人は十分なサービスが受けられますが、運の悪い人は介護サービスが受けられません」というわけにはいかないのである。

 もっとも、どのレベルまでのサービスを提供するかは政府が決めればよい。国民の理解を得た上で「今後、介護サービスは一律半分にします」と法律で決めるなら、それも選択肢の1つであろう。